フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
過去の自分よりも良い演技ができる。
羽生結弦、プログラム変更への自信。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAsami Enomoto
posted2020/02/11 11:50
四大陸選手権で優勝し、男子史上初の「スーパースラム」を達成した羽生結弦。左は2位のジェイソン・ブラウン(米国)、右は3位の鍵山優真。
ベテラン記者からの厳しい批判。
米国のベテランスポーツ記者、フィリップ・ハーシュは自身のコラムで「羽生結弦ほどのクラスの選手だからこそ、敢えて苦言を言いたい」と前置きをした上で、昔のプログラムに戻したことを「まるで壊れたレコードのよう」と批判した。
羽生が2017/2018年平昌オリンピックシーズンに、この2プログラムで挑むことを発表したときも、オリンピック用の新プログラムを作成しなかったことを非難する意見もあった。
だがこのプログラムで挑んだ判断が正しかったことは、歴史が証明している。
確かにフィギュアスケートというスポーツにおいて、各選手が毎シーズンどのような新プログラムを持ってくるのか、というのはジャッジにとっても観客にとっても楽しみの1つである。技術と表現の両方で勝負する上で、新しいプログラムに挑戦するということが、大事な要素の1つであることは間違いない。
挑戦というのは1つの形だけではない。
だが1つ強調しておきたいのは、このスポーツにおける「挑戦」というのは1つの形だけではないことだ。
四大陸選手権で2位になったジェイソン・ブラウンは、4回転ジャンプこそ跳ばないが、表現、振付の難易度、作品の完成度において、男子フィギュアスケートの限界をプッシュして挑戦を続けてきたことが高く評価される選手だ。
羽生はジャンプの先駆者の一人ではあるが、彼がもっとも高く評価されてきたのは、難易度の高いジャンプを跳ぶことだけではない。「いとも簡単そうに、振付の一部のようにジャンプを跳ぶ」という、プログラム全体の流れを重視したそのスタイルと、それを実現させる身体能力だ。