フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
過去の自分よりも良い演技ができる。
羽生結弦、プログラム変更への自信。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byAsami Enomoto
posted2020/02/11 11:50
四大陸選手権で優勝し、男子史上初の「スーパースラム」を達成した羽生結弦。左は2位のジェイソン・ブラウン(米国)、右は3位の鍵山優真。
持ち味と能力を最大限に引き出す。
どの選手も、自分の持ち味と能力を最大限に引き出すために必要な挑戦は、個々の選手によって異なって当然である。
4アクセルという新たな挑戦を見据えた現在の彼にとって、自分の長所を最大限に出せるプログラムに戻すことが必要だった。
クラシックバレエとの共通点。
クラシックバレエとフィギュアスケートは、一方は舞台芸術、もう1つは競技スポーツという違いはあれど、よく比べられる。高い身体能力が要求される技術と、観客を引き込む表現力の両方が必要という意味においては、よく似ている。
クラシックバレエでは、現代振付師による新作もどんどん作成されて演じられているが、その中でこの先何十年も演じ続けられていくだろうと思わせる作品は、ごくわずかだ。
人々はやはり『白鳥の湖』『ジゼル』『ドン・キホーテ』といった名作を、各ダンサーがどのように演じるのかを楽しみに、劇場に赴くのだ。
ファンならば、音楽もストーリーも振付も熟知している。その上で、その日のキャストがどのようなオデット/オディールとジークフリートを、キトリやバジリオを踊ってくれるのかを見たい。
歴史に残る名演技と比べて、各ダンサーがどのようなものを与えてくれるのか見たいのだ。
ミハイル・バリシニコフのような伝説化したダンサーでも、体力の衰えを感じてくるに従いこうした古典の名作を避けて、コンテンポラリーやモダンな作品しか踊らなくなっていった。
それは誰もが知っている作品だけに、過去の自分が演じてきたレベルを保てなくなることが明確に見えるからだ。