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高原直泰・独占インタビュー(前編)。
「僕が沖縄でコーヒー豆をつくる理由」
 

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涌井健策(Number編集部)

涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui

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photograph byNanae Suzuki

posted2020/02/10 07:00

高原直泰・独占インタビュー(前編)。「僕が沖縄でコーヒー豆をつくる理由」<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

高原直泰が沖縄でコーヒーを作りながらサッカーをしている。もう、この時点で興味を持たずにはいられない。

まずは沖縄の土地で育つ品種探し。

 その苗木を海に近い許田と、谷のような地形になっている大宜味の畑に移植。2019年の4月に最初の移植が行われたが、そのときの苗木は現在大きいもので1mくらいに成長していた。これが順調に育てば2m弱まで大きくなり、最初の収穫は2022年を予定していると高原はいう。

「植えているのはアラビカ種のコーヒーです。アラビカ種でもタイプの違う3種類を植えました。でも、どれがここの気候や風土にあうかわからなくて」

 ネスレの小原さんも続ける。

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「台風の直撃もありえるし、許田は海も近いので塩害にやられてしまうかもしれません。でもまずは沖縄の気候・土壌に合うであろう品種の苗木を選定・植樹するなど試行錯誤しながら、沖縄の土地で育つ品種を見つけることがとても大切だと思っています」

 一般にコーヒーの栽培は「コーヒーベルト」といわれる北緯25度から南緯25度の熱帯で行われる。北緯26度に位置する沖縄本島はその圏外にあり、農家が独自に栽培をしているだけで、コーヒー栽培のノウハウがまったく蓄積されていなかった。

 そこで中国・雲南省を始め、世界各国で技術支援を行なっているベルギーの農学者をネスレが招いた。

「雲南省は現在、大規模なコーヒー栽培が行われている土地としての北限なんです。そこでの知見を生かして、沖縄での技術指導をしてもらいました。

 そのときに沖縄で個人単位でコーヒーを栽培している農家さんにもお声がけしたのですが、みんな必死に質問をしていて、なかなか研究者の方を解放してくれない(笑)。予定の滞在時間を大幅にオーバーしました。それだけ沖縄におけるコーヒー栽培は、みなさんが手探り状態でやってきたんだと実感しましたね」(小原さん)

高原「正直、最初からすごい美味しいものにはならない」

 許田のコーヒーファームからは、名護の美しい海がみえる。まだ豆の収穫さえできていないが、この場所でコーヒーを飲んだら美味しそうですね、と声をかけると、「そうなんですよ」と声を弾ませた。

「将来的には、産業の6次化をやりたいですよね。コーヒーをつくる、育てるだけではなくて、それを加工して販売する。この場所を、カフェを併設した観光農園までもっていきたんです。おもしろそうでしょう? 将来的には、この丘の下にある道の駅からダイレクトに登ってこられるようになるので、アクセスもよくなりますから」

 果たして沖縄産のコーヒーはどんな味になるのか。高原も想像がつかないという。

「いやー、土壌次第ですからね。ワインと同じで。かっこつけちゃうと、そのテロワール(土地柄)を表現したいというか(笑)。この許田の畑と大宜味の畑では風味が違うだろうと教えてもらいましたから。

 でも正直、最初からすごい美味しいものにはならないと思います。徐々に沖縄の風土にあったものになっていくんじゃないかなって。暖かい場所でこそ美味しく感じることってあるじゃないですか? オリオンビールも東京より沖縄で飲んだ方が美味しいし、バドライトはハワイで飲むものでしょう(笑)。ドイツの濃くて苦いビールは沖縄にはあわないですから」

「恩返し」と「責任」、このふたつの言葉を胸に行動しつづける高原たちがつくるコーヒー。その風味を味わえるのはまだ先だが、その1杯からは必ず「沖縄」が香ってくるはずだ。(後編に続く)

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