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高原直泰・独占インタビュー(前編)。
「僕が沖縄でコーヒー豆をつくる理由」
text by
涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui
photograph byNanae Suzuki
posted2020/02/10 07:00
高原直泰が沖縄でコーヒーを作りながらサッカーをしている。もう、この時点で興味を持たずにはいられない。
カテゴリーが下がると、地域が見えた。
高原がこうしたサッカーにおけるプレー以外の面について考えをめぐらせ始めたのは、30歳を過ぎたころだった。それまではストライカーとしてどう成長できるか、どうゴールという結果を残すのか――自分自身のことばかりを考えていたという。
「もちろんいいプレーをして、ゴールを決めて、チームを勝たせる。それでサポーターの人が喜んでくれるというのは選手としてシンプルにうれしいですし、J1の強豪クラブなんかはそれでいいのかもしれません。
僕の場合、ドイツから日本に戻ってきて、その後は韓国のクラブにいったり、J2やJ3のクラブでもプレーしました。そうやってカテゴリーが下がってくると、より周りの応援とか支え、それに地域やスタッフとの結びつきが見えるようになってきたんですよ」
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ピッチの「周辺」に目が向き始めたとき、高原が思い出したのはドイツのハンブルガーSVでの経験だ。
「ハンブルクにいたときは、シーズンオフやシーズン中にもチームの選手数名で近郊の小さい町まで出かけていくことがあったんです。話をしたり、イベントに顔を出したり、地元の市民クラブと練習試合をすることもあった。
最初は俺もドイツ語がわからなかったし、『なんで行くの?』『いやだな』と気乗りしなかったんですけど、慣れてくるとそういう場に集まってくれる人こそがクラブを応援してくれているというのがすごく伝わってくるようになったんです。これはすごい大事だな、と」
400坪を切り拓いて農地に。
そんな高原が代表を務め、地域密着を掲げる沖縄SVは様々な取り組みをしているが、その中でも設立当初から高原が目をつけてきたのが農業だ。
「ぼくの頭になんとなく農業というキーワードがあったんですが、沖縄で農業をやられている方の中に、農福連携、つまり農業と福祉を結びつけたソルファコミュニティという組織を運営していて、障がい者の方と肥料を一切使わない自然栽培に取り組んでいる人がいたんです。興味があったので自分で問い合わせをして紹介してもらい、少しずつ農業体験をさせてもらいました」
彼らと一緒に作業をしていくなかで、沖縄における農業を含めた1次産業の問題点が見えてきたという。
「高齢化とか後継者不足もあるんですけど、目についたのが耕作放棄地なんです。沖縄には長年耕作放棄されていて、ジャングルみたいになっている土地が結構ある。それを整備して、ソルファコミュニティとうちの選手で400坪くらいの土地を切り拓いたんです。これはクラブチームがかかわっていけば、何かできるな、と」