スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
2010年代と大リーグの未来。
ハイテク野球の功罪を問う。
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2020/02/01 11:30
大谷翔平の同僚でもあるトラウトは、メジャー昇格の11年以降の通算OPSは1.000を記録。 関連コラム)
データ野球が燎原の火のように広がった。
だが、いま述べた2点は、さほど根源的な変化ではない。もっと大きな変化は、テクノロジーを駆使したデータ野球が燎原の火のように広がったことだろう。
この情報戦争で、最初に主導権を握ったのは投手の側だった。
球速や回転数は上がり、変化球で三振を奪うケースが急増した。
ゲリット・コール、ジャスティン・ヴァーランダー、ジェイコブ・デグロム、スティーヴン・ストラスバーグ……かつて速球で鳴らした彼らも、いまは全員がデータ重視の変化球投手だ。剛速球一本槍で三振を奪うことは、ほぼ不可能に近い。
本塁打は10年間で2000本以上増えた。
それに対して、打者の側はフライボール革命を唱えた。
ダウンスイングは影をひそめ、ラーンチ・アングル打法が球界を席巻した。
三振を喫しようが、ゴロやフライで打ち取られようがアウトに変わりはない、という発想も、あまねく行き渡るようになった。三振数と本塁打数が増加し、単打数や盗塁数や犠打の数が減った原因は、そこに認められる。baseballreference.com のデータで具体的に示そう。
本塁打総数は、2010年に4613本だったのが、2019年には6776本に増えた(2163本増)。ステロイド時代の'90年代(1990年=3317本、'99年=5528本。2211本増)に匹敵する伸びだ。
三振数は、3万4306個から4万2823個に増えた。
単打の数は2万8589本から2万5947本に減った。
盗塁数は2959個から2280個に減った。
犠牲バントの数は、1544個から776個に半減した。