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ついに実施される「現役ドラフト」。
でもこのままでは選手救済できない。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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posted2020/01/24 20:00

ついに実施される「現役ドラフト」。でもこのままでは選手救済できない。<Number Web> photograph by KYODO

現役ドラフトの導入を求めてきた日本プロ野球選手会の炭谷銀仁朗会長(左)と大島洋平理事長。最終的に納得できる制度になるか。

似ても似つかないルール。

 そんなイメージと重ねて昨年の事務折衝では巨人・丸佳浩外野手や西武(現シンシナティ・レッズ)の秋山翔吾外野手らがNPBに実施を迫ったはずだ。

 だが、実際に実施されようとしている日本の「ブレークスルードラフト」案は、メジャーの「ルール5ドラフト」とは、似ても似つかないものである。

 あくまで最終決定ではないようだが、漏れ伝わってきている「ブレークスルードラフト」の内容は以下のようなものである。

(1)実施時期はオリンピックでシーズンが中断する2020年7月末から8月の間の期間。

(2)球団が支配下選手8人の名簿を提出し、その選手がドラフト対象となる。ただしそれまでにトレードを行った球団は、トレードで移籍した人数を差し引けるが、最低6選手は名簿に記載する。

(3)各球団は最低1人の選手を指名するが、指名のなかった選手名は非公開とする。

 残りシーズンが3か月を切った時点で、球団が対象となる選手リストを作成して、その選手を対象に指名し合うというものだ。

有力な選手は囲い込むことができる。

 もちろんこれでも出場機会に恵まれない有力選手が移籍のチャンスをつかめる可能性はないとは言わない。

 しかし、この規定で実効的にそこまでのものが実現できるのか。

 この規定では球団に選択権があるために、有力な選手は囲い込むことができる。戦力外とは言わないが、それに近い選手を選択できるシステムなのである。

「現役選手ドラフト」の話題が出たときには、例えば「巨人から日本ハムにトレードで移籍した大田泰示外野手のような選手が」「阪神の藤浪晋太郎投手もこれをきっかけに」等の楽観的な報道を見ることもあった。

 だが、残念ながらこのシステムではそのクラスの選手は、おそらく1人も対象にはならないはずだ。大田や藤浪のようなビッグネームでなくても、ファームでそこそこの成績を挙げている選手は、おそらく誰も名簿には掲載されないだろう。

【次ページ】 球団の恣意ではなく、条件を満たせば対象に。

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