令和の野球探訪BACK NUMBER
国立・静岡大からドラフト指名野手。
主体性を育む“兼業”監督の仕掛け。
posted2020/01/25 19:00
text by
高木遊Yu Takagi
photograph by
Yu Takagi
高校球界よりも圧倒的に私学が優勢な大学球界。だがここ数年、国公立大学の躍進が光っている。昨秋に京都大が関西学生野球で史上初の4位に入り、全日本大学野球選手権では2014年の静岡大を皮切りに愛媛大(2年連続)、和歌山大、広島大、高知工科大と6年連続で出場を果たした。
そして昨秋のドラフト会議では中日の育成ドラフト1位で名古屋大の左腕・松田亘哲が、阪神の育成ドラフト2位で静岡大の大型外野手・奥山皓太が指名を受けてNPBの世界へ羽ばたいた。
奥山の場合で異例なのが国立大の野手として大卒でプロに入ったことだ。投手は個人練習が多く、チームの強弱に関係なく稀有な素質を持った投手が独自で力を伸ばすことは高校・大学問わずあることだが、野手は打つ球ひとつ取っても周囲のレベルも高くなければ能力を伸ばしにくい。
強豪私学に比べると、国立大から直接プロに入った野手は日本ハムの栗山英樹監督(外野手/東京学芸大→ヤクルト)ら例は少なく、地方国立大となるとさらに稀だ。
静岡大からは初のドラフト指名ということもあり、当日は会見場こそ用意されていたが、奥山はチームメイトたちと自分の下宿先のアパートで指名を待った。
恵まれない環境でも結果を出す静岡大。
さらに静岡大は一部の国公立大にはあるスポーツ推薦がなく、練習環境も恵まれているとは言えず過去にNPBに進んだ選手もいなかった。静岡キャンパス内に野球場はあるが、ところどころ老朽化しており、ナイター設備もない。平日の練習は主に午後3時半から日没までの3時間前後だ。
また、学校からの補助がほとんど無いため、選手たちは練習後やオフ日にアルバイトをしながら、野球道具や遠征費を賄っている。
それでも、2014年春には全日本大学野球選手権に43年ぶり2回目の出場を果たした。選手育成においても昨春にはプロ注目右腕だった山崎智也(現・新潟アルビレックスBC)や大型右腕の和田凌芽(現・七十七銀行)ら独立リーグや社会人に5人が進むなど、地方国立大の中で顕著な実績を残している。
そのキーマンとなるのが、高山慎弘監督だ。