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国立・静岡大からドラフト指名野手。
主体性を育む“兼業”監督の仕掛け。 

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高木遊

高木遊Yu Takagi

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posted2020/01/25 19:00

国立・静岡大からドラフト指名野手。主体性を育む“兼業”監督の仕掛け。<Number Web> photograph by Yu Takagi

静岡大・高山監督(左)と肩を組む奥山皓太。阪神に育成2位指名を受け、夢だったNPBの世界に挑戦する。

平日は会社経営、休日をフル活用。

 高山監督は自らの恩師で40年以上監督を務めた横山義昭氏(現総監督)からの誘いで2013年秋からコーチとして指導に加わり、2018年秋から監督を引き継いだ。

 現役時代は名門・浜松商高では出場機会に恵まれなかったが、静岡大時代はその鬱憤を晴らすように活躍、中軸打者としてリーグ戦を優勝。東海地区代表決定戦で敗れて、全国大会出場はならなかったが、選手主体の野球で私学にも勝てることを肌で実感していた。現在は会社経営の傍らで、「妻には感謝しています(笑)」と休日をフル活用。無償で東京から静岡へ通っている。

 そのため平日は選手だけの練習となることが多い。そこで重要となるのは選手たちの意識だ。自主性が大きな鍵となるだけに、高い意識や正しい取り組みを行うことに重きを置いた。

強豪私学との練習試合を実施。

 2013年秋の就任当初。静岡大は静岡学生リーグで7校中3季連続6位(※現在は8校が参加)だったが、第一印象は「こんなに能力の高い選手がいるんだ」だった。一方で、「(私学に比べ)弱いながらにも勝つ」という考えが甘えに繋がっていた部分を感じた。

 そこで意識改革となるような仕掛けや試みを取り入れた。

 まずは自らの人脈で強豪校とオープン戦を組んだ。慶大、明大、立正大、日体大、上武大、桐蔭横浜大といった大学日本一を経験した大学や、「みんなが同じ方向に向いている」結束力の高いチームの凄みを体感させた。その中で自分たちが勝負できた部分、足りない部分を自覚させたのだ。

 さらに「感覚だけでなくデータをもとに、必要なことや欠けていることを取りこぼさないように」とデータ分析を行なう知人に、ベースへの到達タイムなど具体的な数値を算出してもらい、「ここまでやらないと勝てない」「(もともとの力が)弱かったら勝てないんだ」と目標を明確にした。トップダウンでガミガミと押し付けるのではなく、監督自身が選手よりも声を出すことで、のびのびと野球ができるムードも大切にしてきた。

【次ページ】 選手たちの知恵を借りながら。

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