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J開幕前のスター、サントスが見た
“王国静岡”の高校サッカー。
posted2020/01/22 15:00
text by
熊崎敬Takashi Kumazaki
photograph by
Hideki Sugiyama
静岡学園が24年ぶりの優勝を果たした第98回選手権大会は、高校サッカーがいつになく盛り上がった。
決勝5万6025人と大会通算33万6999人の来場者は、いずれも史上最多。好天に恵まれたことが動員につながったが、“サッカー王国静岡の復活”も大きかった。
マイナー時代、サッカーに憑りつかれた私の世代にとって、“王国静岡”の響きは特別な重みがある。
Jリーグ以前のサッカーは、ワールドカップなど夢のまた夢。リアリティのある夢の頂点には、高校サッカーが輝いていた。その輝ける高校サッカーの中で、もっとも輝いていたのが静岡勢だったからだ。
静岡勢の全盛期は1980年から'90年代後半にかけて。18年間で優勝6度、準優勝3度、3位4度を記録した。超満員の“聖地”国立には、ほとんどいつも静岡勢の雄姿があった。
国見の長崎、青森山田の青森とは違い、静岡は群雄割拠。藤枝東、清水東、清商、東海大一、静岡学園など、どこが出ても強い。これがサッカーどころの底力だ。
おかげで幼いころの私は、静岡県民はみんなサッカーが上手いものだと思っていた。このあたりは、ブラジルのイメージと通じるものがある。
ブラジルでカズと出会って。
そんな“世界のサッカー王国”ブラジルから、“日本のサッカー王国”静岡にやってきた男がいる。
'86年度、第65回大会で得点王となり、東海大一(現・東海大翔洋)を初出場初優勝に導いたアデミール・サントス(現在は三渡洲アデミール)さんだ。
サントスさんと日本をつないだのは、静岡学園を中退してブラジルに渡ったカズこと三浦知良。ふたりはジュベントスでチームメイトになり、カズはサントスさんに高校サッカーの盛り上がりを熱く語ったのだという。