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なぜ彼らは青木宣親の下に集うのか。
村上、中山、宮本、上田、西浦の心。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byKyodo News
posted2020/01/22 07:00
村上宗隆の守備練習を見守る青木宣親。ヤクルトにとって青木の存在は1選手の枠を完全に超えている。
何よりも驚いた村上宗隆の守備。
青木が去年決めたのは、基本的に「自分のことは自分でする」ということだけ。2年目の今年は、食事や洗濯や掃除といった生活面から、日々の体調を整えたり、毎日の練習でテーマを持つことなど、自主性がさらに、そしてしっかりと浸透しているようだった。
そして、それは去年以上に「この時間を無駄にしない」という雰囲気を作り出していた。
たとえば昨季、36本塁打96打点(ともにセ・リーグ3位)とブレイクした村上宗隆は相変わらず年上の選手たちに気を使いながらも、「プロ野球選手である以上、もっといい選手になりたいと思うのは当たり前なんで」と言いながら、貪欲に日々の課題に取り組んでいる。
去年の今頃は「とにかくバットを強く振る」と右翼向こうの車道にとんでもない打球を打ち込んで周りをハラハラさせたが、今年はセンターから左右に強烈な打球を飛ばす。
だが、何よりも驚かされたのは彼の守備だった。基本に忠実なステップ。打球への素早いアプローチ。腰をしっかり落としての柔らかなグラブさばき。きれいなスピンが利いた一塁への正確な送球。
単にキャンプ前のコンディション作りであるなら、たまには力を抜いて、適当にやったっていいのに、一球、一球を大切にしていることが、アツく伝わってくる。
この努力の成果を発揮するには運も必要。
もちろん村上に限らず、「チーム青木」の自主トレに参加した面々が今やっていることが、試合でそのまま再現できるかどうかは分からない。
打撃なら投手や捕手や相手のベンチまでもが敵となるし、守備では天候や走者の有無や試合状況などが不測の事態を呼ぶことになる。
それに彼らのライバルたち――ポジションを争う同僚たち――も今頃は日本のどこかで、同じように課題克服のために自主トレーニングに励んでいるわけで、試合に出場して自主トレの成果を出すためには、運も必要だろう。