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若返る長谷部誠、宮市亮は右SBに。
ブンデス日本人・前半戦通信簿。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2020/01/13 11:50
負傷続きで苦しんだ宮市亮だが、ザンクトパウリで充実のシーズンを送っている。
最近の長谷部は荒々しい“闘士”。
実際に長谷部は、チームパフォーマンスが低かった試合後のミックスゾーンで「今日のスタジアムの雰囲気は、いつもと少し違うと感じた」とコメントしたこともありました。やはり、選手はサポーターの心情を敏感に感じ取っていて、その感情が自身のプレーにも伝播することを実感しているのでしょう。
特に長谷部は、フィールドプレーヤーの最後尾から俯瞰して自チームの様子を観察するポジションであるため、個人ではなくクラブやチームという集合体にフォーカスする傾向があるように思います。
ちなみに長谷部はキャプテンのダビド・アブラアムが欠場するゲームでは必ずキャプテンマークを巻きますが、その振る舞いはどちらかというと荒々しく、主審に異議を唱えたり、相手と交錯した際に口論を仕掛けるなど激しい闘志を見せています。
日本代表キャプテン時代の彼は“整っている”などと評されましたが、アイントラハトの彼は“闘士”という風情で、本人も「感情を表に出すのは自分らしいと思っているし、その方がプレー内容も向上すると思っている」と自己評価しています。
確かに、今の長谷部は浦和レッズでプロデビューした血気盛んな10代の頃の佇まいに似ている気もします。今年36歳になる彼が若返って見えることに対し、僕はむしろ少し高揚感を覚えたりもします。
鎌田が直面しているジレンマ。
一方の鎌田は、どちらかというと冷静沈着で淡々とプレーし続けるタイプに見えます。そんな彼は今、チームメイトの不調やチーム戦術の不備を敏感に捉えているようです。
鎌田が務めるポジションは主に3-4-1-2の「1」にあたるトップ下で、本人は「自分は味方との関係性、コンビネーションのなかで生きる選手」と自覚しています。
それでも、ブンデスリーガのプレー傾向を確実に認識していて、局面打開の際には積極的に個人突破を仕掛けて相手守備網をブレイクしようとしています。
問題は相手守備を切り崩した後の選択肢です。味方の挙動が不安定なのでパスコースがかなり限定されて、窮屈なプレーを強いられているのが実情です。
またアイントラハトの攻撃手段はサイドアタックに特化されていて、左右からのクロスを基盤にゴール前で勝負というパターンに陥りがちなため、鎌田のストロングポイントが生かされる中央でのパスコンビネーションや足下でのスキル発動に持ち込めないジレンマにも直面しています。