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神戸の天皇杯優勝は巨大エポックだ。
遂に見つけた理想と現実の合流地点。 

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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photograph byJFA/AFLO

posted2020/01/06 11:45

神戸の天皇杯優勝は巨大エポックだ。遂に見つけた理想と現実の合流地点。<Number Web> photograph by JFA/AFLO

巨大補強がなかなか実らなかった神戸だが、ついにタイトルに届いた。この成功体験が、クラブにとって大きな自信になるはずだ。

押し込まれた後半に真価がある。

 大分在籍時を含めて鹿島から3得点をあげていた藤本は、この日も“キラー”ぶりを見せつけた。

 1-0で迎えた38分、右サイドからのグラウンダーのクロスを相手DFがクリアミスすると、ほとんど条件反射的に足を伸ばしてコースを変える。相手GKクォン・スンテは、落胆の色を浮かべてボールを見送るしかなかった。負傷明けのビジャに代わるスタメンの役割を、しっかりと果たしたのだった。

 後半は押し込まれた。4-4-2から3バックのような立ち位置に変えてきた鹿島に、自陣に押しとどめられる時間が長くなる。ワークレートが驚異的なレオ・シルバに苦しめられたものの、失点を覚悟するようなシーンは作らせなかった。

 自分たちが追加点を取れないなら、相手にも取らせない戦いができていたところに、ヴィッセルの変化を読み取ることができる。

イニエスタ「分岐点になる」

 チームに初のタイトルをもたらしたフィンク監督は、「大事なのはすぐに結果を求めず、慎重に仕事を進めていくことだ」と話した。

 天皇杯決勝のスタメンのなかで、リージョ監督のもとで戦った2月のセレッソ戦にも先発したのは5人にとどまる。補強を繰り返しながら足りないものを補っていったチームは、シーズンの締めくくりとなる一戦で、来る'20年シーズンへつながる土台を固めることができたのだ。

 キャプテンマークを巻いたイニエスタは、「チームの成長が重要な要素だったと思いますし、これがクラブにとってひとつの分岐点になる」と語る。理想なき現実主義と決別し、現実感を伴った理想主義へと向かっていくヴィッセルは、令和初の天皇杯決勝という大舞台をクラブのターニングポイントとしたのである。

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