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12月10日は箱根駅伝への運命の日。
エントリーから外れた主力たち。 

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佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

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photograph byYuki Suenaga

posted2019/12/14 11:50

12月10日は箱根駅伝への運命の日。エントリーから外れた主力たち。<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

青山学院大学の竹石尚人は自ら辞退を原監督に伝えたという。箱根の厳しさと価値を知るからこその決断だろう。

監督も選手も、最後まで悩む。

 どこの大学も14、15名の選手はわりとすんなり決まる。

 だが、最後の1枠の選考は非常に難しい。故障で間に合うかどうか分からないが、主力ゆえに可能性を信じてメンバーに入れておくべきか。それとも不測の事態を想定して計算できる選手を入れておくべきか、あるいは実績はないが好調を維持する選手を入れるべきか――。

 どの監督もメンバー表を見て目を閉じ、思考を巡らせる。

 選手も、監督と面談する中で最終的な決断をする。故障している、あるいは調子が上がらない自分がエントリーメンバーに入ることが本当にチームのためになるのかを考えるのだ。

 2、3年生ならまだ機会があると考えることもできるが、4年生にとっては最後の箱根になる。藁に縋りついても出たいと思っても不思議ではない。

 だが今回、青学大の竹石は箱根駅伝までに自分の調子を戻すのが難しいと判断し、自ら辞退を原晋監督に申し出た。これは単純な美談ではなく、箱根駅伝に勝つことの重みを竹石が理解し、ランナーとして走れない自分を客観視したうえでの決断で、苦しかったはずだがアスリートとして本当に潔かったと思う。

名前で選考しないチームは強い。

 東海大の關はそこまで状態が悪くはなかったが、他の選手の調子がエースの状態を上回ると両角速監督が判断し、箱根で勝つために落選を決めた。關も「今年こそ」という思いが強かっただけに悔しい思いがあったはずだが、監督の判断に従った。

 そこで名前を優先して選考すると選手と監督の間に「結局は名前かよ」という不穏な空気が流れ、一体感を生む上で障害になってしまう。

 青学大と東海大は、戦う集団になるために不安要素を排除した。選手選考において、緩さや曖昧さを許さないチームは強い。その厳しさが勝負に勝つための空気を醸成していくからだ。両チームは、箱根でいいレースを展開するだろう。

【次ページ】 主力級を抑えてメンバー入りした選手たち。

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