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西武アカデミーにエースはいない。
エリート育成より野球の楽しさを。
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byShinobu Ichikawa
posted2019/12/12 20:00
ライオンズアカデミーでは野球を通じて心と身体を育み、野球の楽しさを伝えている。
パンフレットも「プロ」から「楽しい」へ。
宮田コーチを筆頭にアカデミーのコーチは現在7名。すべてライオンズOBが指導を担当している。
しかし、いわゆるエリートを育てる「強化型」のスクールではないことを、事業部の尾名高悠太氏は強調する。尾名高氏は2018年から事業部アカデミー担当となり、現在はスクールの運営から学校訪問の野球教室など、地域における野球の普及活動に携わっている。
「過去の『スクール生募集』のパンフレットを見直したのですが、発足当初は『ライオンズの育成』とか『プロの選手が近くで練習している』などという記載が多いんです。栗山巧選手のインタビューなども載っていて、もちろんそれは悪いことではないんですが、真っ先にプロ球団が運営するスクールだということをクローズアップしている印象でした。
それが2016年くらいから『楽しく、明るく』とか『未経験者でもOK』『友達がたくさんできます』などの表現が目立つようになります。アカデミーが野球振興という理念を強く持ち始め、前面に出すようになったからだと感じています」
アカデミーの方針に変化が表れたきっかけは、前任者が地域での普及活動を続ける中で、野球人口の減少や、子どもたちの運動離れなどを目の当たりにし、危機感を抱き始めたことではないかと尾名高氏は振り返った。
全員が全ポジションと打順の練習をする。
アカデミーが確立しつつある理念は、スクールの練習内容にも表れている。
現在、スクール生はすべてのポジションの練習をする。全員が試合に参加し、1番から9番まですべての打順で打つ。ライオンズアカデミーには「レギュラー」や「4番打者」、「エース」といった概念がない。
「子どもたちは可能性をたくさん持っている。だからここで適性を決め付けることはしません」とポジションや打順を決めない理由を宮田コーチは説明した。