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西武アカデミーにエースはいない。
エリート育成より野球の楽しさを。
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byShinobu Ichikawa
posted2019/12/12 20:00
ライオンズアカデミーでは野球を通じて心と身体を育み、野球の楽しさを伝えている。
2016年に戦力外、アカデミーコーチに。
宮田コーチは西武ライオンズ出身。2009年にドラフト6位で入団し、活動8シーズンで35試合に登板した左腕投手である。2016年オフに戦力外通告を受け、合同トライアウトを受験。現役続行を望んだが、叶わず、ライオンズアカデミーのコーチに就任した。
「自分はいわゆる強豪校の出身ではないですし、プロ以外ではレベルの高いチームでプレーした経験がありません。現役時代もほかの石井丈裕コーチや星野智樹コーチのように一流選手だったわけではないので、『僕に指導ができるのか』という不安も正直ありました。
最初は手探りで、何をしたらいいのか全くわかりませんでしたね。だから、まず1年間は平尾さん(博司・現二軍打撃コーチ)や石井さんなどの姿を見て、僕自身もスクール生と一緒に学んできた感覚です」
感覚を、子どもに伝わる言葉にする。
宮田コーチが最初に取り組んだのは、「感覚の言語化」だ。プレーヤーが自身の感覚を言葉にし、それを小学生に伝えるのはとても難しい。
「バーンと打つんだよと言っても伝わらないんで(笑)。言葉で説明できるようにとにかく勉強はしました。たとえば、『足を開いて体勢を低くしてゴロを捕球しなさい』という基本動作にも、ちゃんと理由があります。内股になるとお尻が落ちず、体勢が高くなってしまってうまくゴロが捕球できないからと、理由も一緒にしっかり伝えることが大事だと感じます。
それも、子どもがわかる言葉で説明することが大事で、今でも伝わらないときはたくさんありますね。そのたびに反省して、どうしたら伝わるか考えます。かみ砕いて、かみ砕いて、これ以上はかみ砕けないってところまでいっても伝わらないこともある。もっと勉強しなきゃいけないなと気が引き締まります」
アカデミー生には野球経験がある子もいるが、中にはボールを握るのが初めてだという子どももいる。その子に合った指導や声掛けが必要とされる難しい仕事だ。