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小さな、反体制の、家族的なクラブ。
ブンデスを騒がすウニオンの異端性。
posted2019/12/07 08:00
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph by
Getty Images
1989年11月にベルリンの壁が崩壊してから30年後の、今年11月。
ブンデスリーガ1部で初めて旧東ドイツを拠点としたウニオン・ベルリンと西ドイツを拠点としていたヘルタ・ベルリンの対戦が実現した。2部では'10-'11シーズンと'12-'13シーズンにこのカードは行われたものの、1部では初のこと。
1部では小規模の部類に入る、2万人強で満員になるアルテ・フェルステライに詰め掛けた観衆は、この歴史的な試合に酔いしれた。
日本でも、内田篤人が'17-'18シーズンの前半に所属したことで広く知られるが、ウニオン・ベルリンはカルト的な人気を誇るクラブだ。
東ドイツ時代には、独裁政権に対抗する人々の象徴的な存在だった。東西ドイツが統一して以降は財政難に苦しみ、幾度も破綻危機と再建を経験した。だがクラブが財政難に陥れば、サポーターがスポンサー獲得に奔走した。予算がない中でスタジアムを建て直すとなれば文字通り自らの手で工事にも参加してきた。
反体制的なマインドを持ち、決してビッグクラブとはいえないこのクラブのサポーターたちの結びつきはきわめて強い。
有名なのはクリスマスで、12月23日にはクリスマスキャロルイベントを行う。この日は3万人弱のファンたちがピッチをも埋め尽くし、キャンドルを手に讃美歌を歌う。ドイツ人にとって大事なクリスマスに集まるというのは、家族と同様の結びつきであることを意味する。
ヘルタ・ベルリンは何かと派手。
一方のヘルタ・ベルリンは、日本では原口元気や細貝萌が在籍したことでも知られている。
彼らが使用するオリンピアシュタディオンは7万5000人近くを収容する巨大なもので、この夏には投資事業体テナー・ホールディングと「ブンデス史上最大規模」の契約を締結。2.25億ユーロの投資を受け、テナー社は上限の49.9パーセントの株式を取得した。
11月には15位と成績不振にあえいでいたことから、アンテ・チョビッチ監督を解任。後釜にはバイエルン・ミュンヘンをはじめドイツ代表、アメリカ代表を率いた経験を持つユルゲン・クリンスマンを据えた。今季は何かと派手な話題にことかかないのだ。