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小さな、反体制の、家族的なクラブ。
ブンデスを騒がすウニオンの異端性。
text by
了戒美子Yoshiko Ryokai
photograph byGetty Images
posted2019/12/07 08:00
ブンデスリーガの中でも、ウニオン・ベルリンのアルテ・フェルステライの「圧」は一線を画すものである。
1部昇格を歓迎しなかったサポーターも?
対照的な両チームだが、このダービーマッチではウニオン・ベルリンが劇的な勝利をおさめた。
0-0で迎えた84分、ラストパスを受けたクリスティアン・ゲントナーへのファウルがPKと判定される。審判はVARでの確認をした上であらためてPKを与え、これをエース・セバスティアン・ポルターがきっちりきめて、1-0に。試合はこのまま終了、ウニオンは勝利を納めた。
クラブ史上初めて1部に上がったウニオンのファンたちは、1部での時間を楽しんでいるように見える。ホーム初戦となった8月の開幕戦・ライプツィヒとの試合では、試合を見ているだけで涙ぐむ観客が多く見られた。
一方でわずか3シーズン前には、2部から昇格するチャンスを迎えながらも一部のサポーターたちは昇格を望まなかったことが話題になった。
1部になればいやが応でも予算規模が増し、テレビ中継などで国外にもクラブの存在が知られることになる。今回のベルリンダービーも英国のBBCで特集が組まれた。記事だけでなく、現地で取材を行った動画をウェブ上でも見ることができる。注目度の高い試合だったわけだ。
ウニオンファンたちの気持ちは、ゆれる。チームには勝ってほしい、でも自分たちの手作りの、反体制で小規模なクラブのままでありたいと望む。
ドラマチックなシーズンを期待。
チームは1部での戦いに慣れてきたのか、じわじわと順位を上げており第13節終了時点で11位だ。
目を見張るのはホームでの戦いぶりだ。開幕戦こそライプツィヒに完敗だったが、ここまでドルトムントに勝ち、ヘルタに勝ち、首位ボルシアMGをも下しているのだ。
ホームスタジアムの雰囲気も、大きく影響しているだろう。例えばフランクフルトも今季はホームでわずか1敗と好調で、ホームでの応援を含めた雰囲気を強みにしているが、コンメルツバンク・アレナと比べても、雰囲気の独特さならばウニオンに軍配があがる。
2万人強しかはいらない小型のスタジアムで、しかも3面がスタンディング。密集感と圧迫感が凄まじい、他のどこにもない雰囲気なのだ。
ウニオンと似たカラーで知られるザンクトパウリのミラントア・スタディオンですら3万人近いサイズであり、だいぶ雰囲気が違う。
今季このまま残留圏内で終えるのか、それとも降格してしまうのか。まだまだ先のことは誰にもわからない。あまりたくさん勝てなくても、ここまでの戦いのようにビッグクラブやダービーマッチには勝つというのがドラマチックで面白いのだが。