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ルイス・エンリケ監督復帰の闇。
果たして誰が嘘をついているのか。
posted2019/12/06 11:30
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph by
Uniphoto Press
今回の話は、スペイン代表版『藪の中』である。
まずは実際に起きたことを順に述べよう。
2018年7月、スペイン代表がW杯を早々に敗退した直後、同国サッカー協会のルイス・ルビアレス会長は新監督にルイス・エンリケを選んだことを発表した。契約期間は'20年ユーロまでの2年間だった。
ところが、ユーロ予選第2節マルタ戦を翌日に控えた'19年3月25日、「個人的事情」を理由にルイス・エンリケは突如代表を離れてしまった。これは後にわかったことだが、9歳の娘シャナちゃんが骨肉腫を患っていることが発覚したため、協会の飛行機を使って文字どおりバルセロナへ飛んで帰ったのだった。
アシスタントのモレノが正式監督に。
そこでマルタ戦と6月上旬に行われた予選第3・4節では、'08年から彼のアシスタントを務めてきたロベルト・モレノが指揮を取った。そして6月19日、ルビアレス会長は協会のスポーツディレクターであるフランシスコ・モリーナとモレノと記者会見を開き、ルイス・エンリケの辞任とモレノを正式に後任とすることを明らかにした。
その際の会長の言葉である。
「自分の代表監督期は終わったとルイス・エンリケから連絡があった。これから新たな監督が先導する新たな時代が始まる。皆にはっきり覚えておいてもらいたい」
8月29日、シャナちゃんが逝去した。
9月3日、予選第5・6節のメンバーを発表する場でモレノはルイス・エンリケの復帰を歓迎した。
「もう一度監督をやりたいというなら僕は喜んでこの席を譲り、彼のアシスタントに戻る」