第96回箱根駅伝出場校紹介BACK NUMBER
進化した大エース擁する東京国際大学。
神奈川大学は主力の爆発力がカギ。
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箱根駅伝2020取材チームhakone ekiden 2020
photograph byNanae Suzuki / Yuki Suenaga
posted2019/12/06 11:00
予選会で見事日本人トップに。
1年目から大志田監督やチームの期待に応えたかった伊藤だが、その意気込みが空回りしてしまう。左すねにシンスプリントを発症して戦線離脱し、チームも箱根駅伝出場を逃した。
走路員として箱根駅伝のコースに赴いた1年生の伊藤は、自分の背を駆け抜けていく選手たちを見送る度に、「来年はここで走るんだ」という思いを強くしていった。そして、2年生でチームが箱根駅伝本大会への出場権を獲得したことで、その目標をクリア。しかし、憧れの2区を走ったものの、区間15位と全く勝負にならなかった。
「振り返れば、当時から『エースだ』なんて言われていましたけど、そうやって呼ばれることに満足してしまっていたのかなと。本当はまだまだエースの実力はなかったのに……」
そんな想いから奮起した伊藤は、3年生の11月には八王子ロングディスタンスの10000mで、好タイム(28分28秒62)をマーク。一気に学生トップランナーの仲間入りを果たす。しかし、箱根駅伝では2区で区間11位と、またしても自分が思うような走りができなかった。
だが、2年連続で味わった悔しさは、4年生となった伊藤を世界の舞台へと押し上げた。箱根駅伝から2カ月後の2019年の3月、第22回日本学生ハーフマラソン選手権で1時間1分52秒の3位に入った伊藤は、ユニバーシアード競技大会の日本代表入りを果たす。この日本代表として走った経験が、さらに伊藤を大きく変えた。
「ユニバーシアードでも銅メダルが獲れたのはうれしかったですけど、一緒に行った相澤(晃/東洋大学)くん、中村(大聖/駒澤大学)くんに負けたことの悔しさのほうが大きくて。だから、今年の箱根駅伝予選会は、とにかく『日本人トップ』を目標にしていました」
その言葉通り、伊藤は箱根駅伝予選会においては見事な走りで、日本人トップで走り切った。
「目標は、2区で区間賞」
縁起の良い八王子ロングディスタンスの10000mでは、今年も28分26秒50の自己新をマーク。超一流ランナーの証でもある27分台を目指したがゆえのオーバーペースに加え、中盤のスピードの上げ下げで体力を削ってしまったため、数秒だけの自己記録更新だったが、「27分台を意識していなければ、もっといい記録では走れたと思います」とさらり。
確実に、そして着実に。自分が強くなるために必要なことを考え、見つけ、実行し、それを結果につなげてきた。
そんな伊藤だからこそ、最後の箱根駅伝に懸ける想いは人一倍強い。
有言実行の男が掲げる目標は“学生日本一”。
「予選会で勝ちの喜びを知ることができました。それをもう一度、味わいたいですね。目標は、2区で区間賞。各大学のエースが集まるこの区間で勝てたら、学生日本一と言ってもいいんじゃないでしょうか」
にこっと笑って、大胆不敵な言葉を放つ。
ただ、その表情を見ていると、なぜかその言葉が現実味を帯びてくる。
箱根駅伝往路、2区で伊藤が有言実行の走りをしてくれれば、東国大創部9年目にして、初のシード権獲得も見えてくることだろう。