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進化した大エース擁する東京国際大学。
神奈川大学は主力の爆発力がカギ。 

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箱根駅伝2020取材チーム

箱根駅伝2020取材チームhakone ekiden 2020

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photograph byNanae Suzuki / Yuki Suenaga

posted2019/12/06 11:00

進化した大エース擁する東京国際大学。神奈川大学は主力の爆発力がカギ。<Number Web> photograph by Nanae Suzuki / Yuki Suenaga

「区間がどこでも、区間賞を」

 箱根駅伝では序盤でいかに流れを作るかが、神奈川大が上位に進出するためのカギ。その勢いをもたらす起爆剤となるのが越川の役割だ。チームの課題、そして自身の役割を理解しているからこそ、越川は積極的なレースを箱根駅伝予選会で見せた。大きな課題を残しはしたものの、越川の表情は晴れやかだった。

「走りたい区間は特にないので、任せてもらった区間がどこでも、区間賞を獲りたいと思っています。4年間で最後の箱根なので、しっかり良い走りをして終わりたい」

 そう集大成のレースでの快走を誓っている。

 箱根駅伝予選会でチャレンジしたのは、越川だけではなかった。前回3区9位と好走した井手孝一(3年)、3000m障害の名手である荻野太成(4年)、ハーフマラソンで実績がある安田共貴(4年)は、他のチームメイトが最初の5kmを抑えて走るなか、14分53秒とハイペースで入った。井手は失速を最低限にとどめ、チーム2番目の30位だったが、荻野と安田は15kmからペースダウンし、それぞれ45位、89位でフィニッシュした。

エース格の荻野は1区か、6区か?

 荻野も、これまでの実績からすればエース格に成長すべき選手だ。だが、今季は4月の順大競技会で左のアキレス腱を負傷し、3000m障害で4連覇がかかった関東インカレ(2部)には、スタートラインに立つことも叶わなかった。ようやく練習を再開できたのは6月からだった。

「今シーズンはケガから始まって思うような結果が残せず、(9月の)日本インカレには出場しましたが、失格に終わってしまいました。今年はうまく回っていないので、箱根予選ではチームに貢献できればいいなと思っていたんですけど、納得のいく走りが全くできませんでした。残すは箱根しかないので、悔しい思いをしてきた分、箱根で発揮できればいいかなと思っています」

 と荻野は決意を固めている。前々回は5区で区間20位と振るわなかったが、前回は6区で区間7位ときっちり走った。

「前回は、ただ突っ込んで、ただ山を下っただけ。どこをどう走ろうというのは考えていませんでした」

 と、前回は無我夢中で箱根の山を下って、好走につなげた。今回も6区での再起用もあるだろう。もしくは、前回まで3年連続で山藤篤司(現トヨタ自動車)が務めた1区起用もある。「1区は自分の性格に合っている。個人走よりも集団で走ったほうが結果が出る」と自身もスターターを希望し、序盤からチームを勢いに乗せるつもりだ。

 もちろんチームカラーの堅実さも大きな武器。箱根駅伝予選会でチームトップの22位だった森淳喜(4年)は、全日本大学駅伝に出場した実績はあるが、箱根駅伝本大会はこれまでに出番がない。森は4年間かけて着実に力を付けて、箱根駅伝予選会では、暑さに苦しむ選手が多いなか、後半にペースアップして見せた。森のような選手がいたからこそ、越川や荻野が果敢なレースをすることができたと言っていい。

 箱根駅伝予選会から1カ月後の日体大競技会(11月30日)では、10000mで好記録が続出した。

 荻野が28分39秒30、越川が28分55秒11と調子を上げてきただけでなく、前回箱根駅伝も、箱根駅伝予選会も走っていない川口慧(2年)が28分48秒33と新たな戦力も台頭。また、前回9区4位と好走した北﨑拓矢(3年)、5区を走った小笠原峰士(3年)も28分台をマークした。

 優勝候補にも上がっていた前々回は13位、そして前回は16位と、神奈川大は苦しいレースが続いている。だが、堅実さと爆発力が融合した時、再び上位戦線に浮上してきそうだ。

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