One story of the fieldBACK NUMBER
清原和博はなぜ号泣したのか。
離れたはずの家族、友人との絆。
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph byKyodo News
posted2019/12/02 20:00
清原和博は視線と声援をその身に受けてこそ活力をみなぎらせる人間である。
人に見られることで元気になる人種。
気がつけば、日が西に傾いていた。清原はずっとグラウンドにいた。医学的見地に立てば、稼働限界はとうに超えていたのかもしれない。
ただ、清原は嬉々としてグラウンドにいる。
冒頭の紳士はそれを眺めながら、何かに気づいたようにこう言った。
「自分も含めて普通なら疲れてしまうんじゃないかと思うんだけど、大勢の人に見られたり、声援を送られたり、そういう中にいるほうが元気になれるんだろうなあ、あの人は……」
その通りかもしれない。
歓声の中に、視線の中に、バットと白球が触れ合う音の中にいればいるほど、清原はよみがえっていく。それらを喰って生きている。
きっと、そういう人種なのだろう。
2人の息子からのメッセージに。
そして最後に飛びっきりの「声援」が清原の胸を射抜いた。
協賛企業を探しては断られ、協力メディアを探しては断られ、それならばと自費を投じてイベントを実現させた「グリーンシードベースボール財団」の顧問・西貴志をはじめとした、このイベントを企画した仲間たちがサプライズで渡したものがある。
白いTシャツ。
そこに2つの見慣れた字体があった。
「まだまだ若々しく元気でいろよ 絶対負けんな」
「いつもバッティングを教えてくれてありがとう これからも元気でいてね」
ふたりの息子からのメッセージだった。
しばし絶句した強面の大男は、こらえきれずに人目をはばからず号泣した。
「一生、忘れることができない……。まだまだ薬物との戦いは続きますが、応援してくれる人たちのために、息子たちのために頑張っていこうと思います」
清原を囲んだメディアの人間も泣いていた。