野球のぼせもんBACK NUMBER
内川聖一、20年目の好奇心と悔しさ。
「二度とそういう思いはしたくない」
posted2019/12/04 20:00
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Hideki Sugiyama
ホークス・バレンティンの誕生が秒読み段階に入っているようだ。振り返れば、こんなことがあった。日本記録のシーズン60本塁打を放った'13年オフにホークスの孫正義オーナーが「バレンティンを獲れないのか?」と球団幹部にせっついたらしい。そんなラブコールが6年の時を経て実現することになるのもプロ野球の面白いところだ。
また、12月2日に公示された保留者名簿の中にはデスパイネ、グラシアルの名前が記載されておらず、バレンティン獲得は“万が一”の備えという見方もある。しかし、球団は2人を残留させるためのキューバ政府との交渉に必要な措置と公表しており、難航はしていないという。
来季のホークス打線はとてつもない破壊力を持つことになりそうだ。
一方で、野球は「枠」のスポーツである。誰かが入れば、誰かが弾き出されるのが常だ。シーズンオフになる毎に選手たちは人事情報に敏感になる。“逆取材”をされることもしばしばだ。
その1人が内川聖一だった。
バレンティンが来れば、中村が一塁に?
やはり気になるよな、と思った。現体制にバレンティンが加わると仮定すれば、外野陣は「左翼・バレンティン、中堅・柳田悠岐、右翼・グラシアル」となることが予想される。
その場合はレギュラー格の中村晃が行き場を求めて一塁へ回ることが考えられる。つまり内川とのレギュラー争いが勃発するわけだ。
あの野村克也氏に「プロ野球誕生以来の右の好打者」と言わしめた内川だが、今シーズンは137試合出場で打率.256、12本塁打、41打点の成績。出場試合数こそ3年ぶりの3桁に乗せたが、打率は3年連続で3割に届かなかった。
先日、野球教室の取材で会った時に今シーズンを振り返ってもらうと、レギュラーシーズンの不甲斐なさと共に、ポストシーズンで味わった悔しさも口をついた。
「クライマックスシリーズでは代打を送られたこともあったし、日本シリーズでもスタメンで出られない試合もあった。それは全部自分の責任です。ただ、二度とそういう思いをしたくないというのは本音です」