One story of the fieldBACK NUMBER
清原和博はなぜ号泣したのか。
離れたはずの家族、友人との絆。
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph byKyodo News
posted2019/12/02 20:00
清原和博は視線と声援をその身に受けてこそ活力をみなぎらせる人間である。
医学でも科学でもなく、人の影響力。
そういえば、清原の顔に艶が戻りはじめ、かつてのように言葉が出てくるようになったのは、今年の春からだ。
まだ野球を続けている次男から代理人を通してバッティングに悩んでいるという相談がきた。切れたはずの絆がつながった裏には、長男と、そして元妻の存在がある。
清原にとって、それ以上の救いはなかった。
それからというもの、通算525本塁打の名スラッガーは打撃についての動画サイトを四六時中、見ていたという。
劇的な変化はそこから始まっている。
そこから連なり、次第に大きくなっていく歓声と球音が、清原を清原らしく引き戻していく。
鬱病、薬物依存症に苛まれる患者のイメージを薄くしていく。
医学でも、科学でもない。
人が人に与える影響について、ただただ驚くばかりである。