メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
MLBでワンポイント登板が禁止に?
安易な改正案と、イチローの言葉。
text by
四竈衛Mamoru Shikama
photograph byGetty Images
posted2019/12/01 11:50
2015年からMLBコミッショナーとなったマンフレッド氏(右)はMLBの法律顧問を務めていた弁護士で、前任のバド・セリグの右腕としても知られた。
サイン盗みがより悪質で巧妙に。
昨今のMLBは、2015年にロブ・マンフレッド氏がコミッショナーに就任して以来、試合時間の短縮を最重要事項として、改善に取り組んできた。
確かに、無暗にプレートを外す投手、打席から離れる打者が多いことは否定できない。特に、投手が投げないことにはプレーが始まらないスポーツだけに、投手の投球間隔、そして今回の投手交代策にも矛先が向けられることは、ある意味で当然なのかもしれない。
ただ、近年の試合時間長期化は、決して、頻繁な投手交代や投球間隔だけが原因ではない。
試合時間短縮に躍起な機構側は、2018年から監督、コーチ、捕手らがマウンドへ行く回数を、1試合(9イニング)で6回まで、今季は5回までに制限した。投手コーチ、捕手らが「タイム」を取ってマウンドへ駆け寄る回数が増えたことへの対応策だった。
では、なぜ、マウンドへ行く頻度が増えたのか。
その背景に、各球団のサイン盗みや伝達が、悪質でより巧妙になった事実があることは、もはや言うまでもない。走者が二塁へ進めば、サインの「キー」を変更したり、ブロックサインをミックスさせたりするチームも増えた。
安易に野球規則を変えてしまう違和感。
サインが盗まれている可能性が高ければ、読唇術で分析されないように、グラブで口元を隠したうえで配球を確認し、ノーサインで投げるケースも少なくない。
その結果、サイン違い、伝達不足などで捕逸、暴投が頻出し、さらに試合が長くなる。そんな負の悪循環が、現在のメジャーでは繰り返されている。
限りなく「クロ」に近い「飛ぶボール」への変更問題、今オフの話題をさらっているアストロズのサイン盗み問題など、野球の根幹に関わる疑念を解決しないまま、安易に野球規則を変えようとする姿勢には、強い違和感を禁じ得ない。
今後は、マウンドを低くする案、マウンドと本塁との距離を伸ばす案など、ほとんど理解不能な改正プランもあるという。