熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
ブラジル優勝U-17W杯で記憶すべき、
巨大な才能+不参加だった超逸材。
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byGetty Images
posted2019/11/20 08:00
U-17W杯表彰式での一幕。ブラジルのベロン(中央)、フランスのアウシッシュ(右)は数年後、サッカー界で大きく名を上げるだろう。
メキシコは5大会中3度決勝進出。
準優勝のメキシコの頑張りも、胸を打った。飛び抜けた選手こそいないが、丁寧にショートパスをつないで攻め、粘り強く守る。準決勝のオランダ戦は相手のスピードとパワーに圧倒されたが、守備陣の奮闘で辛うじて引き分け、PK戦でGKガルシアがオランダ選手のキックを3本止めて勝ち上がった。決勝でも劣勢だったが、臆せず攻めて先手を取り、超大国ブラジルに冷や汗をかかせた。
日本では「小柄な選手がパスをつなぐスタイルで、世界の強豪に肉薄しているメキシコを見習おう」という声があると聞く。個人的には、「いくらスタイルが似ているとはいえ、W杯で優勝はおろかベスト4に入ったこともない国を見習うとは、志が低すぎないか」と思ってきた。
しかし、U-17W杯でメキシコは過去2度優勝しており、直近の5大会で実に3度、決勝に進んでいる(優勝1回、準優勝2回)。選手育成に関して、日本はこの国から学ぶべき点があると認めざるをえない。
潜在能力が最も高かったフランス。
個人的に潜在能力が最も高いと感じたのは、3位のフランスだ。守備陣にフィジカルが強い大型選手が揃い、創造性豊かなアディル・アウシッシュ(パリ・サンジェルマン)がゲームを組み立て、ナタナエル・エムブク(ランス)らが思い切りの良いシュートを放つ。準々決勝でスター軍団スぺインを6-1と粉砕した試合は圧巻だった。
GSでいきなり連敗した欧州王者オランダは、最後のアメリカ戦でシステムを3-4-3に変え、終始、攻撃的にプレーして圧勝。GS3位ながら勝ち上がると、ナイジェリアとパラグアイに快勝し、準決勝でも内容ではメキシコを圧倒していた。「日本はベスト4に残ったオランダに勝った」と考えるのは間違いで、アメリカ戦以降、日本戦とは全く別のチームになっていた。
その日本は、GS初戦でオランダに3-0で快勝したが、その後のアメリカ戦、セネガル戦はやや低調。ラウンド・オブ16でも力を出し切れず、メキシコに敗れた。
欧州、アフリカ、北中米の強豪と対戦して貴重な経験を積んだのは確かだが、さらにその上のクラスのチームと対戦できなかったのが悔やまれる。