酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
台湾vs.韓国、NPB外国人も多数参戦。
プレミア12は日本以外もぜひ注目を。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKoh Hiroo
posted2019/11/10 20:00
台中駅に飾られていたプレミア12の看板。台湾では野球が大人気スポーツなのだ。
実は韓国、五輪出場が危うい?
韓国は、李大浩がソフトバンクからマリナーズに移籍した2016年以降、日本でプレーした選手はほとんどいない。世代交代が進み、“韓国のイチロー”李鍾範(元中日)の息子の李政厚、MLBでのプレー経験がある朴炳鎬、金賢洙などの選手がそろっているが、対戦データに乏しく、未知数の不気味さがある。
ただし韓国は「大誤算」があった。10月のアジア野球選手権で中国に敗れ、4位に終わったのだ。この大会自体では五輪出場権は獲得できないが、来年3月に台湾で行われる「オリンピック最終予選」の出場権がかかっていた。
しかし韓国は4位になったため最終予選に出場できなくなったのだ。韓国が五輪に出場するには、プレミア12でアジア最上位になるか、少なくとも日本に次ぐ2位になる必要がある。文字通りまなじり決して挑んでくる。日韓戦が実現すれば、すごい戦いになるだろう。
以前MLBで活躍した選手が主力に。
なおプレミア12は、原則としてMLBのレギュラー選手(40人枠)は出場しない。MLB、MLB選手会が主催するWBCとは異なり、WBSC(世界野球ソフトボール連盟)の主催だからだ。
だから、野球の強豪国であっても、MLBに人材を供給している国は、ベストメンバーを組むことができない。そのために、マイナークラスの選手と、少し前までMLBで活躍していたベテラン選手が主力になる。
台湾ラウンドでいえば、ベネズエラもプエルトリコもそういうチームだった。
日本vs.ベネズエラで先発したフェリックス・ドゥブロンは松坂大輔の同僚としてレッドソックスで2桁勝利を2回記録した先発投手。日本vs.プエルトリコで投げたジョバンニ・ソトもMLB経験がある投手である。
彼ら「昔の名前」の選手たちは、台湾、日本の野球関係者にいいところを見せて「再仕官」の口にありつきたいと思っている。だからモチベーションはそれなりに高い。
しかしチームとしてのまとまりは今ひとつだ。今回のプレミア12では、ベネズエラとプエルトリコは、元メジャー級の投手が先発で投げる序盤こそ日本、台湾と好勝負を演じたが、投手が交代すると急に失点して崩れることが多かった。やはり寄せ集めの感は否めない。
ちなみに球場には家族と思しき超グラマラスなお姉さんや太ったおじさんが、勝っても負けても陽気に騒いでいる。そこには侍ジャパンのような「何が何でも世界一」みたいな悲壮感はない。この差を味わうのもまた国際大会の楽しみだ。