メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
「逆転本塁打を打たれたかと思った」
筒香嘉智のスイング、メジャーが絶賛。
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byKYODO
posted2019/11/02 20:00
メジャー挑戦を表明した筒香嘉智。今季、DeNAでは29本塁打を放った。
お世辞抜きの本音トーク。
「試合後のクラブハウスでも3人(菅野、千賀、筒香)の話で持ちきりだった」
イエリチは祖父が日本人で「太田」の名を持つ日系三世。日本には特別な思いを持つ選手のひとりだが、お世辞抜きの本音トークに聞く側も心が躍ったことをはっきりと覚えている。
さかのぼること5日、アリゾナ州メサでは侍ジャパンが決勝ラウンドを前にシカゴ・カブスと練習試合を行った。結果は6対4でカブスが勝利したが、試合内容よりも当時の将であるジョー・マドン監督(現エンゼルス)が語った日本チームについての一言が忘れられない。
当時は決勝ラウンド目前ということもあり、日米に於いてこのコメントがクローズアップされることはほとんどなかったが、知将の名をほしいままにする指揮官が放った言葉の意味は重かった。
「日本チームが素晴らしいことは言うまでもないが、どうして打者はみんな同じようなタイミングの取り方をするのだろうか。あれだけ大きく足を上げていたら、メジャーの投手が投げるムービング・ファストボールを打つのは厳しいだろう」
筒香のストロングポイント。
進化を続ける日本球界に於いて、昭和の時代から変わらないのが、足を大きくあげてタイミングを取る打者の打ち方とゴロは体の正面に入れて捕るという考え方だ。この2つは日米でプレーする野手を比較した場合、大きな差が生じるところだ。
この問題の是非を議論するのは他の機会に譲りたいと思うが、マドン監督はたった1試合の練習試合で「タイミングの取り方が気になる」と言ったのだった。
摺り足でノーステップに近いタイミングで投球を体の中まで呼びこみ、インサイドアウトに振り抜くスタイルがメジャーの一流どころだ。
ここ数年は何が何でも本塁打の考えから引っ張り専門のマン振り打法も目につくが、彼らにしても意識をすれば逆方向へ長打を打つその技術は持っている。摺り足に近いタイミングの取り方と合わせ、米国で生き残るためには必須と言える。
そして、まさに筒香のストロングポイントはここにある。