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老将ラニエリとモッタの「2-7-2」。
サンプ、ジェノアは窮地を脱せるか。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byUniphoto Press
posted2019/11/02 19:00
現役時代はインテル、バルサなどでもプレーしたチアゴ・モッタ。指揮官としてジェノア再生のかじ取り役となれるか。.
ジェノアの躍進を支えた英雄。
T・モッタは、2009-10シーズンにインテルが達成した3冠メンバーの1人だが、ジェノア・ファンにとってはその前年にFWミリートとともに5位大躍進を遂げた英雄に他ならない。
プレーしたのはわずか1年限りとはいえ、2008年当時、左膝の大怪我によってA・マドリーからお払い箱になっていた自分を拾い上げ、その後の豊かなキャリアを切り開いてくれた大恩あるクラブからの頼みとあれば、T・モッタに「NO」と言う選択肢はなかった。
2018年に現役を引退したばかりのT・モッタの指導経験は、昨季のパリSGユースを率いた1年しかない。経験不足を不安視する現地メディアは、新人監督がパリで試していた「2-7-2」という奇想天外な戦術に注目した。
「チームを右から左に縦で割る。左右のサイドに2人ずつ、中央の帯はGKを含む7人でケアする。FWは攻撃的プレスによって守備の一番手となり、GKは攻撃の最初の組立て役だ」(T・モッタ)
ただし、布陣を前後ではなく縦に分割するユニークな試みはあくまで数字のトリックであり、実戦では4-3-3か4-1-4-1に分類される。
「見かけの数字に囚われすぎてはならない、というのが本当の意図さ。今のサッカーは流れるように動かなくてはならない。5バックでも攻撃的サッカーはできる」
各クラブで名将の薫陶を受け続けた。
T・モッタは最も影響を受けた監督として、ジェノア時代のガスペリーニ(現アタランタ)の名を挙げるが、これまでに薫陶を受けてきた指導者リストは圧巻だ。
バルセロナ時代のライカールトとファンハールに始まり、インテルでモウリーニョ、パリSGに移籍してからはアンチェロッティ(現ナポリ)にブランなど世界的名将たちからその指導エッセンスを吸収してきた。
まるで山から降りてきたばかりの仙人みたいな風貌で、ボソボソとした語り口からは、濃紺と赤のユニフォームを着ていた11年前の姿は想像もつかない。
それでも、T・モッタの頭の中には彼なりのプランがあるようだ。主将クリーシトやMFストゥラーロを故障で欠く今、急務は守備の建て直しだがサイド攻撃を根本に据える。