セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
老将ラニエリとモッタの「2-7-2」。
サンプ、ジェノアは窮地を脱せるか。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byUniphoto Press
posted2019/11/02 19:00
現役時代はインテル、バルサなどでもプレーしたチアゴ・モッタ。指揮官としてジェノア再生のかじ取り役となれるか。.
夕食中ファンに取り囲まれる会長。
しかし、ジャンパオロ流のサッカーが染み付いていたチームに、新監督の代名詞である4-3-3はなかなか根付かなかった。得点王クアリアレッラも新戦術への適応に苦しんだ。さらに、長引くクラブ売却交渉のせいで移籍市場での動きが制限され、思うような戦力補強が進まなかったことも、チーム作りにはマイナスに働いた。
レジェンドOBであるビアリを代表に立てた投資グループによるクラブ買収交渉は1年近く続けられていたが、法外な売却価格を迫る奇人オーナー会長フェレーロとの交渉は難航。ドリアーノ(=サンプファン)たちの不満の矛先は会長へと向かい、夕食中にレストランを取り囲まれた彼が身の危険を感じ警察を呼ぶ事態にまで発展した。
昇格組ベローナにも0-2の惨敗を喫したクラブは、10月7日にディフランチェスコとの契約解除を発表した。そして同日、痺れを切らした投資グループも買収交渉からの撤退を通告した。
クラブは疲弊し、選手たちは自信を失った。何よりサンプドリアにはサッカーに集中できる平静さが欠けてしまった。
窮地を託すにはラニエリしかいない。
窮地を託すに百戦錬磨のラニエリ以上の人格者はいない。現場主義で信仰に篤い人らしく「『天は自ら助くる者を助く』という。スコアで劣ってもやる気だけはどんな強豪にも負けてはならない。試合で起用するのは全力を尽くす者のみだ。どんなおとぎ話にも、その裏には流した汗がある」と説く。
レスターで歴史的優勝を果たした名将が「サンプドリアはこんなところ(最下位)にいるようなチームじゃない。私は確信している」とまで言えば、選手たちの自尊心は大いに刺激されたはずだ。
ラニエリは68歳の誕生日にサンプドリアでの初陣に臨んだ。昨季もやはりディフランチェスコの後任として率い、今も愛してやまない故郷のクラブ、ローマが対戦相手だった。
0-0で何とか勝ち点1を加えたが、続く9節ボローニャ戦には1-2で敗れた。5カ月で2度も監督が変わったチームは未だぎくしゃくしている。
「失敗するのはいい。ただし、その後の反発心を私は選手たちに求めているんだ」(ラニエリ)
サンプドリアはなおも最下位でもがいている。