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老将ラニエリとモッタの「2-7-2」。
サンプ、ジェノアは窮地を脱せるか。
posted2019/11/02 19:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Uniphoto Press
港町ジェノバに逆風が吹いている。
セリエAの2つの古豪、サンプドリアとジェノアは開幕から負けに負けを重ね、8節終了時点での黒星は16戦合わせて11回。サンプが挙げたゴール数はリーグ最少4得点で、ジェノアは最多20失点という有様である。
最下位圏のファンたちの間では「今季のジェノバ・ダービーは残留決定戦になるかも」という、笑えないジョークすら飛び交っている。
両クラブはたまらず監督交代に踏み切った。
サンプドリアがいち早く8節から御年68歳のベテラン指揮官ラニエリを迎えれば、ジェノアも9節から37歳で監督初挑戦のチアゴ・モッタを招聘した。
経験も指導法もまったく異なれど、新監督2人の目指す先は同じ。ジェノバ勢残留の命運は、最年長ラニエリと最年少T・モッタに託された。
「順位表を見て目を疑ったよ。歴史も伝統も実力もあるはずのサンプが最下位だなんて。こんなことがあってたまるか、とね」
老将ラニエリの就任会見の言葉には“伝統も戦力もあるはずの老舗クラブがまさか”という率直な驚きが含まれている。
ジェンパオロ退任で開幕7戦6敗。
南イタリアの下位カテゴリーからプレミアリーグ制覇まで、底辺と頂点を知り尽くす指導者歴33年の大ベテランにとっても、今季のサンプドリアが開幕から陥った7戦6敗という極度の不振は首をかしげるものだったらしい。
しかし、陥穽はそこかしこにあった。
昨季のサンプドリアは走らず(平均走行距離18位)、クロスにも頼らず(成功数18位)、それでいてインテルやミランを上回るリーグ5位の60得点を挙げた。GKセーブ数が18位と極端に少なかったのは、前任者ジャンパオロがきちんとブロックによる守備を教え込んでいたからだ。
今夏、彼がミランに引き抜かれると、やはり攻撃サッカー信奉者として一定の実績を持つディフランチェスコ(元ローマ)が新監督として招聘された。昨季逃したEL出場権を今季こそ、という周囲の熱も高かった。