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老将ラニエリとモッタの「2-7-2」。
サンプ、ジェノアは窮地を脱せるか。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byUniphoto Press
posted2019/11/02 19:00
現役時代はインテル、バルサなどでもプレーしたチアゴ・モッタ。指揮官としてジェノア再生のかじ取り役となれるか。.
モッタのジェノアは初陣で劇勝。
一方、ジェノアの新監督T・モッタは初陣を派手な逆転勝ちで飾った。
10月22日の初練習指導からわずか4日後、9節ブレシア戦に臨んだ19位ジェノアは、前半を0-1でリードされるも後半に投入された選手たちが次々にゴールを陥れ、本拠地「フェラーリス」は興奮の坩堝に。
気がつけば、リーグ史上初の“交代3選手による3ゴール逆転勝ち”という歴史的白星で、T・モッタとジェノア・ファンにとってこれ以上ない景気づけになった。
「勝てたことが今日の試合で一番大事だ。この数日間、選手たちのことを少しでも深く知ろうと努めてきた。このチームに実力はある」
今シーズンへ臨むに当たり、やはり新監督アンドレアッツォーリを迎えたジェノアは、サンプと対照的にMFシェーネやDFサパタなど即戦力の積極補強を進めた。残留争いに苦しんだ昨季の二の舞はゴメンだとフロントの意気込みも高く、開幕戦でも強豪ローマ相手に3度追いつくなど出だしは良かった。
前監督は分析家として有能だったが。
誤算は、新監督が勝負師ではなかったということだ。
今年で66歳になるアンドレアッツォーリという指導者が長いアシスタントコーチ業の末に初めて世に出たのは、'13年の冬にゼーマン(当時)を解任したローマから暫定監督に据えられたときだった。
当時から目先の勝敗に感情を露わにせず、学者然というか理想主義者というか、浮世離れしている印象を抱いたことを覚えている。
今年、ジェノアの監督として連敗を重ねてもそれは変わらず、敗戦後の会見でもどこか他人事のようだった。これではファンの支持は得られない。
アンドレアッツォーリは“分析家”としては一流だが、指揮官として勝敗に淡白すぎた。昨季率いたエンポリも善戦しながら理想に溺れて降格した。
彼に惚れ込んで招いたプレツィオージ会長にとっては苦渋の序盤戦だったにちがいないが、そうこうしているうちに目をつけていた中堅指導者ピオリはジャンパオロを解任したミランに掻っ攫われ、ラニエリも仇敵サンプに先を越された。追い込まれた会長がすがったのは、11年前の甘美な記憶だった。