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最強軍団ソフトバンク “圧倒的な強さの秘密”は「スタベン」にあった【日本一4連覇なるか】 

text by

石田雄太

石田雄太Yuta Ishida

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photograph byHideki Sugiyama

posted2020/11/24 11:01

最強軍団ソフトバンク “圧倒的な強さの秘密”は「スタベン」にあった【日本一4連覇なるか】<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

2017年から日本シリーズ3連覇中の福岡ソフトバンクホークス。今年、4連覇なるか

盗塁はベンチにいる時から始まる

 さらに驚かされたのが、その福田が口にしたこんな言葉だ。第1戦で千賀滉大がピンチを迎えたとき、第2戦で柳田悠岐がチャンスで打席に立っていたとき、福田は一塁側ベンチの右端に乗り出して戦況を見つめていた。いつもと違う位置に立っていた理由は当然、千賀や柳田に気を送ろうとしていたからだと思いきや、そうではなかった。福田はこう言ったのだ。

「僕は代走でずっと生きてきましたから、あの位置にいたのは、ギリギリの場面でセットポジションに入ったピッチャーを一塁ランナーに近い角度から見たかったからです。今は周東が代走の一番手ですけど、僕も代走でパッと出たとき、初球からスタートを切れるように、あのベンチの端っこで盗塁の意識づけをしているんです」

 福田の準備はこれだけではない。

 スタベンのときの試合中、福田は5回をメドに裏のケージで一人、スローボールのマシンを使って緩いボールを打ち続けている。グラウンドにいなくても仕事はあった。

「僕は子どもの頃から一人での練習をずっと続けてきました。素振り、カベ当て、走り込み……今、緩いボールを打っているのは、縦振りを意識しているからです。速いボールに対しては力負けしないように身体が前へ突っ込んでバットが横振りになってしまうので、いつも縦振りを意識して、打球に角度をつけようと思っています」

ずっとスタベンでいたいわけではない

 福田は去年、自らのバッティングを見つめ直した。それまでは足を活かすために逆方向へゴロを転がす打ち方を心掛けていた。しかしデータを分析した結果、自身の長所は引っ張った打球の強さにあるのではないかという結論に達した。そのためにスイングを横振りから縦振りに変えて、打球を上げる本来のバッティングスタイルに戻そうとしたのだ。結果、福田は去年、今年とホームランを増やしている。走って守って、長打も打てる――福田はこう言った。

「今までは足が一番の武器だと思っていましたけど、これからは長打力が武器だと言いたいですね。3拍子揃った、数字で言うならトリプルスリーを目指せるような選手を、30歳過ぎの遅咲きながら、本気で目指したいなという気持ちはあります」

 だから福田は、スタベンでいることをよしとしない。役割は理解しつつも、試合の頭から出ることにこだわっている。

「その気持ちがなくなったら終わりだと思っています。人間、慣れって怖いもので、スタベンが続くと『もういっか』となってしまいかねない。でも、僕は絶対にそうなりたくないんです。スタメンから外れるたびに『くそっ、なぜオレを使わないんだ』と思いたいですし、レギュラーの選手を見て『オレはここまでだ』とは絶対に思いたくない。僕は今でも柳田悠岐に勝ちたいという気持ちを持っていますし、ギータも打てなくなったら取って代わられるという危機感が常にあると思います。そういう一人一人の危機感こそが、ホークスの強さにつながっているのかなと思います」

 ジャイアンツに4連勝して日本一の胴上げをしたとき、福田は工藤公康監督の左腰を支えて、胴上げをした。

「僕は胴上げのときは、いつも必ず身体を持ち上げるんです。胴上げするというのはそういうことなんで……いつもそうです」

 スタメンもスタベンもない――戦いに挑むホークスの選手たちは全員、上も下もない役割を自覚して、なすべき仕事を忠実にこなしていた。こんな成熟したチームには、そうお目にかかれるものではない。

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