第96回箱根駅伝(2020)BACK NUMBER
箱根駅伝予選会で感じた“新時代”の幕開け。
各校の歓喜と落胆に見た、新たな勢力図。
posted2019/10/31 11:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Shigeki Yamamoto
箱根駅伝予選会。
時代が大きく動いた感触があった。
新しい勢力が力を伸ばし、その一方で、伝統校が本大会の出場権を逃した。
箱根駅伝の勢力図が変わりつつあることを実感させる大会だった。
今回は気温が上がり、選手たちにとっては過酷なレースとなった。2位に入った神奈川大学の大後栄治監督は、レースをこう振り返った。
「10km地点でウチがトップだったでしょう? これは危ないと思いました。本来、ウチは前半ゆっくり入って後半に粘るタイプのチームですから、飛ばしすぎだったんです。後半に入ってガタッと崩れるんじゃないかとヒヤヒヤしました。そして実際、前半に突っ込んで入った選手たちはバテましたが、それでも、2位。他の大学は、よりしんどいレースになったということでしょう」
季節外れの暑さが、サバイバルレースを演出したのだ。
東京国際大学に見た、本物の強さ。
その過酷な条件で光ったのが、トップ通過した東京国際大学の安定感だ。
全日本大学駅伝の関東地区選考会でもトップで通過しており、この強さは本物だ。二枚看板であるイエゴン・ヴィンセント(1年)、日本人トップで全体5位の伊藤達彦(4年)のふたりは、本大会の主要区間でも上位で走れる力を持っている。
彼らだけではなく、俗に「中間層」と呼ばれるチーム内で5番手以降の選手たちの走りも安定しており、大崩れする心配がない。
箱根駅伝本大会でもシード権争いに絡むのは間違いなく、いよいよ「常連校」としての座を築き始めていくだろう。
そして6位で予選を通過した筑波大学の復活は、オールドファンを喜ばせた。前身の東京高等師範学校は大正9年に開かれた第1回大会の出場校で、早稲田大学、明治大学、慶應義塾大学とともに「オリジナル4」とも呼ばれている。実は今回の予選会は、この4校が一堂に会するという昨今では珍しい大会でもあった。