第96回箱根駅伝(2020)BACK NUMBER

箱根駅伝予選会で感じた“新時代”の幕開け。
各校の歓喜と落胆に見た、新たな勢力図。 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byShigeki Yamamoto

posted2019/10/31 11:00

箱根駅伝予選会で感じた“新時代”の幕開け。各校の歓喜と落胆に見た、新たな勢力図。<Number Web> photograph by Shigeki Yamamoto

10月下旬とは思えない高い気温が予選会に波乱を生んだ。

26年ぶりの箱根駅伝に挑む筑波大学。

 筑波大に関していえば、この四半世紀ほどは、他校の強化態勢に押され気味となっていたが、卒業生である弘山勉監督の下、じっくりと強化を進め、着実に力を伸ばしてきた。しかも気温が上がってハードなレースになったことが、序盤、慎重にレースを運んでいた筑波大にとっては追い風となった。

 10kmで12位、15km通過点では8位と順位をじわりじわりと上げていき、最終結果の発表を待った。

「6位、筑波大学」

 そうコールされた瞬間の歓声とどよめきは、この日いちばんのものだったかもしれない。

 箱根駅伝本大会の出場は1994年以来、実に26年ぶり。古豪の復活を喜びたい。

 筑波大の復活の陰で、早稲田大学は9位、中央大学は10位と苦戦を余儀なくされ、卒業生の間からも、「お正月は大丈夫なのか?」と不安の声が漏れた。

プライドが、暑さが、足を引っ張った。

 早大と中大に関しては、暑さに翻弄された印象がある。中大の藤原正和監督は、予選会をこう振り返った。

「今年の予選会は例年と比べて1週間遅いこともあり、気温もその分、下がるだろうと想定していたので、スピード練習を中心にやってきました。スピードがなければ本大会で戦えないという思いもありますから。ところが、これだけ気温が上がってしまうと、スピードではなく耐久力の勝負になってしまいました」

 早大、中大のような名門校になると、予選会でも上位通過することが求められる。すると、どうなるか。

 たとえ気温が高くとも、序盤から積極的に先頭集団につけ、他校のライバルたちへと勝負に行く。

 早大の主将、太田智樹(4年)のラップを見ると、最初の5kmは15分ちょうどで入り、5kmから10kmまでが15分09秒。しかし、ここから一気にダメージが襲ったか、10kmから15kmまでが15分52秒もかかり、最終的には1時間3分58秒で16位という成績になった。

 また、中大の駅伝主将の舟津彰馬(4年)は、最初の5kmを15分22秒で入ったが、次の5kmで16分台へとペースダウン。

 両校とも名門校ゆえのいい意味でのプライドがあり、序盤から積極的なレースをしたことが暑さのせいで裏目に出た格好になった。

 その意味では、今回の予選会の結果が本大会へと直結するかというと、そうとも言い切れない。夏から秋にかけての走り込み、そしてスピード練習は決して無駄ではない。

 名門校は、箱根駅伝本大会に対する経験も豊富。早大の相楽豊監督は、

「予選会はこういう結果になりましたが、あくまで本大会では3位以内を狙っていきます」

 と話す。

 予選会で積極的なレースを展開したことが学びとなり、本戦へとつながっていくことに期待したい。

【次ページ】 麗澤大学は2年連続の次点。

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