“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
徳島が3年かけて築き上げた連動性。
ロドリゲスサッカーはJ1に届くか。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2019/10/26 11:40
好調・徳島ヴォルティスのキーマンMF渡井理己。今季はすでに6ゴールを挙げ、大宮戦でもゴールに絡む活躍を見せた。
「やばい」ではなく「チャンスになる」。
「去年より自信を持ってボールに触りにいけるようになりましたし、僕のところまで相手を引きつけてから組み立てられるようになった。それまではどうしてもリスクを考えてしまって、引き付ける前に蹴ったりしてしまっていた。
もちろんうまくプレスをかけられて、蹴りだすしかない場面を作られることもありますが、相手が当然それを狙ってくることは理解できているので、いかに質を上げられるか冷静に考えられるようになりました」
昨季との違いについてこう答えたのはGK梶川裕嗣だ。彼はロドリゲス監督が就任した'17年に湘南ベルマーレから加入すると、1年目から守護神の座をつかんだ。その後、控えに甘んじた時期もあったが、昨季は第9節FC岐阜戦から再び守護神の座に戻り、今季は開幕戦以外の全試合でフル出場を飾っている。まさにロドリゲスサッカーと共に歩んできた選手だ。
「今年になって、相手がプレスに来た時こそチャンスと思えるようになった。『やばい』ではなくて、『このプレスを剥がせばチャンスになる』と思えるようになった」
この梶川の感覚の変化は大きな意味を持つ。ロドリゲス監督が就任以降、ずっと取り組んできたことだったが、すぐにその領域にたどり着くことは容易ではない。うまくいったときとハマらなかったときの落差など、結果からくる心理的な部分も大きな影を落とす。
だからこそ、この波に捕らわれずに、いかにコツコツとぶれずに時間をかけて積み上げていけるかが、チームのビルドアップにおいて大きな分かれ目となる。
「正直、やることは今と変わっていないけど、僕らがちょっと我慢できない部分がありました。こっちがボールを持っていれば相手の運動量が落ちてくることを全員があまり深く理解できていなくて、急いでしまっていた部分がありました」
焦れる時間帯になるとミスを恐れたり、考え方に余裕がなくなりチームコンセプトを放棄してしまう。徳島もそのパターンにハマることがあった。だが、結果がどうあれ、長い年月をかけて積み上げてきたからこそ、チームの歯車が回り出せば強固な自信が生まれる。
「終盤になれば、点が取れる」
ここ10試合で、徳島は20ゴールを挙げている。そのうち前半のゴール数が4、後半のゴール数は16。後半に勝負を決める展開が多いことがわかる。梶川はこう続ける。
「今は『終盤になれば、絶対に点が取れる』という自信があるので、後ろからしっかり繋げるようになった。結果が出ていないときは、正直自分たちの中に『これで本当にいいのだろうか?』という疑問が生まれてしまっていたのかもしれない。それが今はなくなった。
最初の方は勝っても、なんだかんだで勝ったという印象でした。でも、途中から『僕らがこうしているから勝った』と思えるようになったんです。積み上げてきたものと、自信がリンクしてきたのだと思います」