野球善哉BACK NUMBER
高野連・竹中雅彦さんは誠実だった。
どんな批判にも耳を傾けた事務局長。
posted2019/10/22 11:00
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Kyodo News
それ言わなくてもいいのになぁ。
矢面に立つ日本高校野球連盟・事務方の長の説明を聞きながら、そんなことを何度も思った。懇切丁寧に説明してくれる姿勢はありがたかったが、突っ込む要素を残してしまう危険が彼のやりとりには多かった。
その竹中雅彦さんが16日、和歌山市内の病院で息を引き取ったという悲しいニュースを聞いた。
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竹中さんは一言でいえば、関西人の陽気なおっちゃんだった。
フリージャーナリストや夕刊紙の記者が厳しい質問を投げかけても、何とか言葉を探して答えてくれる。煙に巻く言い方が全くなかったわけではないが、高圧的な態度で取材を遮られたことは一度もなかった。
日本高校野球連盟には、頭が堅いというイメージが定着している。あながち間違いとも言い切れないイメージだが、竹中さんほど取材に対してまっすぐ向き合って言葉を発し、メディアの批判に耳を傾ける事務局長は今までいなかった。
だからこそ、投手の健康問題にも真正面から立ち向かい、解決策を探る唯一無二の存在になってくれるだろうと期待していた。
タイブレーク導入で矢面に立った。
2014年の秋、タイブレーク制度導入へ向けた会合が行われ、神宮大会の最中に同球場の一室で会見が開かれた。その時に、矢面に立ったのが竹中さんだった。
2013年の選抜大会で、済美の安楽智大投手(現楽天)が2回戦の広陵戦で1試合232球を投じ、日本のみならずアメリカを巻き込んで大きな話題となった。さらに2014年の選抜大会では再試合が続発し、高野連に対する改革の要求が高まっていた時期だった。
竹中さんはそうした事態を深刻に受け止めていた。当時の会合は「タイブレーク制度導入」という結論で決着したが、指導者など現場サイドの理解を得られなかったと会見で説明した。
「なぜ、球数制限に踏み切らないのか」「日程の問題は解決できないのか」と質問を投げかけると、竹中さんは1つ1つ説明して理解を求めた。