ブンデス・フットボール紀行BACK NUMBER
鎌田大地の才能に地元ファンも注目。
フランクフルトでの変身ぶりとは。
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byUniphoto Press
posted2019/10/14 11:40
日本代表でも最前線のキーマンになるのではと期待がかけられている。鎌田大地にとって2019-20シーズンは勝負の1年となる。
突如ゴールを強奪するスタイル。
僕は、シント・トロイデンでの鎌田のプレーをこの目で観たことがあります。シント・トロイデンのシステムもアイントラハトと同様3-4-1-2でしたが、トップ下にはロマン・ベズスというウクライナ人のプレーメーカーがいました。
そのため、鎌田はヨアン・ボリと2トップを組んでいました。ボリは快足を駆使したカウンターアクションに秀でる選手で、鎌田はその後方に控えつつ、突如フィニッシュシーンに飛び込んでゴールを強奪するようなプレーを得意としていました。
ちなみに当時のチームメイトである関根貴大(浦和)は鎌田のプレースタイルについて、
「試合中はほとんど姿が見えないけど、美味しいところに現れて、颯爽とゴールする」と表現していました。
フィニッシュに関与する頻度が多い。
一方、アイントラハトにおける鎌田のプレーは以前とかなり異なります。ボールタッチは頻繁で、常に味方からボールを受けようとフリーランニングし、パスを受けたら巧みなターンやスラロームチックなドリブルで局面打開を図ろうとしています。
ブンデスリーガの局面強度は強烈で、鎌田は何度も激しいチャージに遭ってはピッチへ倒れ込みます。しかし、その卓越したスキルで相手のファウルを誘発してFKを得ることも多いです。
シント・トロイデンでのプレーを思い出させるのは相手のゴール前で、積極果敢な仕掛けを好むチームメイトが多いなか、鎌田はフィニッシュシーンに関わることに注力するため、あえてボールサイドへ寄らずブラインドエリアで構える所作が目立ちます。
そして実際、鎌田がフィニッシュシーンに関与する頻度は大変多いです。まるで忍者のように気配を殺して相手の急所を突く! そんなシーンが何度も訪れるのですが、何故かシュートが入らない……。相手GKの好セーブに阻まれたり、相手の守備者のブロックに防御されたり、バーを直撃したり、ポストの真芯に当たって跳ね返ったり……。なんだか呪いにかけられているかのようです。
鎌田自身も「これだけゴールできないのは初めて」と語っていて、少々気にしている様子。またヒュッター監督も「もちろんリーグ戦で1ゴールでも決まれば、カマダにとって大きなターニングポイントになるだろう。それこそ彼のプレーにまだ足りないものだ」と評していますが、指揮官はそれでも鎌田に対する信頼の度合いを変えていません。
「彼はチームに好影響をもたらしている。1点を挙げることで、その結び目が解ければ、最高なことだと思うよ」