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柿沼利企、日本人ドリブラー、19歳。
スイス第3のクラブで成り上がる。
posted2019/10/14 09:00
text by
栗田シメイShimei Kurita
photograph by
FC Lugano
今季、ELを舞台に戦う日本人は10名に迫る。
フランクフルトに所属する長谷部誠、鎌田大地、ポルトの中島翔哉、パルチザンの浅野拓磨、PSVの堂安律、ヘントの久保裕也ら代表経験者から、西村拓真(CSKAモスクワ)、菅原由勢(AZ)。いずれもJリーグを経て、フル代表や世代別代表にも選出されている選手だ。
そんな中で1人、代表経験もなければ、Jリーグでのプレー経験すらない若者がいる。
柿沼利企(かきぬまりき)、19歳――。柿沼は栃木県の鹿沼西中学校を卒業し、高校サッカーの名門・前橋育英高を中退後、アルゼンチンを経て、スペイン・ヘタフェのユースチームと契約した。
昨季、スペイン3部アルカラFCでレギュラーとしてプレーした柿沼の存在を知る日本人はほとんどいないだろう。身長168cm、体重も60kg程度と体格に恵まれているわけではない。それでも柿沼は今季、ELに出場しているスイス・スーパーリーグのFCルガーノへの移籍を果たしたのだ。
スイスリーグは“トランポリン”。
今夏、柿沼にはポルトガルのポルティモネンセSC、CSマリティモへの移籍話も浮上したという。そこでなぜスイスだったのか。柿沼は、自身の選択の理由をこう話す。
「ルガーノはチームのほぼ全員が代表経験者で、経歴でいえば僕なんか何の箔もない“ペーペー”です。でも、そういう場所から上がっていくのが自分らしくて良いかなとも思っている。将来的なステップアップを考えた際、スイスという国は大きな魅力に溢れているんです」
ヨーロッパサッカーの中で、スイスリーグの立ち位置は“トランポリン”と形容されることがある。毎年多くの選手が、ここからイタリアを中心とした5大リーグへの移籍を果たしているからだ。
スイスといえば、日本人にとっては柿谷曜一朗、中田浩二が移籍したことで知られるが、現在スイスリーグで戦う日本人はハーフナー・マイクの弟であるハーフナー・ニッキのみ。昨季はFCヴィル1900に所属し、今季はFCトゥーンに移籍している。柿沼は、今季スイス2人目の日本人となった。