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小笠原満男が子供達に薦める親離れ。
大船渡での下宿とチャーハン選手権。
posted2019/10/08 11:30
text by
池田博一Hirokazu Ikeda
photograph by
Kyodo News
朝からウニやイクラなど、旬な海産物が並ぶ。食べ盛りの高校生は、ご飯の上に乗っけて一気にかきこむ。
豪勢な朝メシだが、海沿いの漁港がある街ではめずらしい光景ではない。岩手県大船渡市は、サンマやホタテ、ムール貝など、豊富な海産物が漁獲される。
「齋藤先生が買ってきてくれるのはもちろん、他にもお裾分けでいろんな食べ物が届けられるんです。ウニやイクラもそう。大船渡ではいつも当たり前に食卓に出てきて食べていたから、大人になってからあんなに高級なものだってことを知りました(笑)」
現在、鹿島アントラーズのアカデミー・アドバイザーとして育成部門の全カテゴリーに対してサポートを行う小笠原満男は、岩手県大船渡高校時代に下宿を経験した。今でも恩師と慕う、齋藤重信先生の自宅で高校3年間を過ごした。
「高校年代は多感な時期で、いろいろあるもの。そんなときに、いろいろ管理してもらえる。サッカーのためにみんなで共同生活をして“すべてをサッカーに向けましょう”という生活は、すごくいい経験になった」
練習後の「チャーハン選手権」。
齋藤先生が不在のときは、ともに下宿する先輩後輩と自炊することもあった。焼きそば、肉野菜炒め、ときにチャーハン。学校での練習を終えて帰宅すると、簡単にできる炒め物を中心に、さっと食事の準備をする。「チャーハン選手権」と題し、誰が一番美味しく作れるかを争ったのは良き思い出だ。
「みんなと食べていれば、誰が何をどれだけ食べているのかを見られる。“あいつが食べているから、俺ももっと食べないといけない”とか。上級生がどういう行動をして、どういう発言をしているかを見ることもできる。集団生活も大事なこと。それに、親から離れることにもなる。自分のことを自分でできるようになるために、寮生活はすごくいいことだと思う」
人として生きていくために、何をすべきか。当たり前のことを、当たり前にできるようになるために。下宿生活は、自然と小笠原自身の自立を促した。
「食べた後は自分で食器を洗っていたし、食事も洗濯も自分たちでやっていた。風呂やトイレも交代で洗う。基本は先生が食事を作ってくれていたけど、“手伝います”と言ってよくやっていたし、先生がいないときは、スーパーでの買い出しから“自分たちでメニューを決めてやれ”と言われて、自分たちで作った。いろんなことを覚えることができた。実家にいたら掃除も洗濯も料理も、全部、親がやってくれちゃうからね」