“Mr.ドラフト”の野球日記BACK NUMBER
2009年ドラフトの今を検証<西武編>。
菊池雄星を指名したような冒険心を。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byKyodo News
posted2019/10/05 18:00
菊池雄星投手の交渉権を引き当て、喜ぶ西武・渡辺久信元監督(左、現在はGM)。
投手偏重なのに「打高投低」。
西武の過去のドラフトを見て少し気になる点がある。
まず、野手の指名が現在に至るまで2位(巡)以下に集中していることだ。
'01年が2巡中村剛也、4巡栗山巧、'03年が7巡佐藤隆彦(G.G.佐藤)、'04年が3巡片岡易之(治大)、'08年が3位浅村栄斗――。近年のドラフトで野手を1位指名したのは'13年の森友哉ただ1人で、森以外では分離ドラフト(高校生と大学生&社会人を別の日に指名していた)だった'05年高校生ドラフト1巡で炭谷銀仁朗を指名しているところまでさかのぼらなければならない。
どの選手も後に日本代表クラスの野手に成長しているように、彼らのほとんどはドラフト1位クラスの力量があった。それを見抜いたともいえるが、たとえば高橋光成('14年1位)ではなく岡本和真('14年巨人1位)を、齊藤大将('17年外れ1位)でなく村上宗隆('17年ヤクルト1位)を積極的に指名していたらどうだろう。現在の西武を上回る若さに溢れた強力打線が組めた可能性があったのである。
つまり、西武は「投手主体」のドラフト戦略をとってきた。にもかかわらず、現在のチームバランスはいびつで、極端な「打高投低」を招いている。今年は勝率.563で2位ソフトバンクに2ゲーム差をつけて2連覇を飾ったが、チーム打率.265(リーグ1位)、本塁打174(2位)、得点756(1位)に対して、投手成績は防御率4.35(6位)、被本塁打143(5位タイ)、失点695(6位)と散々。投手偏重ドラフトでありながら結果的には投低現象を引き起こしている。
10年前にあった冒険心が欠けている?
その原因を探ると、冒険心の足りなさが思い当たる。
競合を避けた1位の単独指名が'11年十亀剣、'14年高橋、'15年多和田真三郎、'16年今井達也、'18年松本航と5例もある。ライバルのソフトバンクは'11年武田翔太、'14年松本裕樹の2例、日本ハムに関しては'12年大谷翔平だけ。過去2年は西武のほうがリーグ順位は上だが、将来を見据えるとやや不安である。
挙げた5人は一軍の主力なのでもちろん異論はないが、競合覚悟で、たとえば有原航平('14年日本ハム1位)、'今永昇太(15年DeNA1位)を指名していたら今年のような防御率リーグ6位にはならなかったのではないか。抽選で外れたときのリスクを恐れ70点の指名をめざしている、というのが最近の西武のドラフト戦略だと思う。
ちなみに、6位指名した岡本洋介はこのオフ、阪神で戦力外を通告された。'15年にはキャリアハイの42試合に登板し、6ホールドを挙げ、'17年には先発に役割を代えて6勝3敗。'18年に阪神へ移籍して34試合に登板、'19年は3試合と落としていた。