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阿部慎之助を東京ドームで見送って。
引退試合は結婚式に似ていると思う。
posted2019/10/04 20:00
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph by
Yasutaka Nakamizo
巨人にとって激動の1週間、いや1年間だった。
9月21日夜に5年ぶりのリーグVを決めたと思ったら、24日早朝には阿部慎之助の現役引退のニュースが流れた。27日に本拠地レギュラーシーズン最終戦で引退試合を開催するらしい。
振り返れば、約1年前の平成30年9月28日に東京ドームで「ありがとう村田修一」をやってから、高橋由伸が辞めて、原監督が帰ってきて、カープからMVPプレーヤー丸佳浩が加入し、V3の功労者だった内海哲也や長野久義が去り、上原浩治が引退して、5年ぶりの優勝を飾り、令和元年9月27日には「ありがとう慎之助」で背番号10を見送りって激動の1年過ぎるよ……。
24日明け方、スポーツ新聞各紙を買って読んでみても当然頭は混乱していたが、一方でどこか冷静に「東京ドームで引退試合ができてよかったな」と思う自分もいた。
色々あってゴジラ松井も由伸も上原もそれができなかった。でも阿部はみんなで見送れる。
'01年プロデビュー、まだ長嶋監督時代だったことを考えると、かなり昔のことに感じてしまう。阿部は最後の長嶋チルドレンで、原巨人の2度のV3は背番号10とともにあった。これで本当の意味で「平成巨人」が終わるんじゃないだろうか。そう思った。
27日のDeNA戦は運良くバックネット裏のチケットを確保してある。よし、心して阿部慎之助を見に行こう。
引退試合は結婚式に似ている。
当日、メトロ・エム後楽園に立ち寄ると、優勝グッズが華やかに飾られていて久々のVを実感する。自分もすでにロゴ入りのTシャツにバスタオルにキャップにタンブラーと、まるで新生活応援セットのようなあんたいったいどこに引っ越すんだと突っ込まれる量のグッズを買ってしまった。
東京ドーム周辺はもちろん「ありがとう慎之助」一色だ。優勝と引退が一緒にくるこの複雑な心境。
以前、なにかのコラムで書いたが、引退試合は卒業式というより結婚式に似ている。ファンにとって、それは目の前の現実を受け入れる儀式だからだ。
あれだけ時間と金を注ぎ込んで、青春のすべてを捧げたのに行っちまうのか……。マジ悲しい。今夜、何かが決定的に終わったけど、人生は続いていく。さあ、胴上げでもして、思いっきり飲もうぜってさ。