プレミアリーグの時間BACK NUMBER
「ないもの」だらけの名門マンU。
それでも監督交代は得策ではない。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byUniphoto Press
posted2019/10/05 11:40
スールシャール監督の首元がいきなり涼しくなっている。マクトミネイはその苦境を救うことはできるか。
キャリックのようなパサーが欲しい。
補強を見据えるのであれば、スールシャール体制下の「核」とも言うべき守備的MFを最大限に生かすためにも、センターフォワードよりも、チャンスメイカーよりも、マクトミネイの新パートナー獲得を求めたい。
フレッチャーがいた当時のユナイテッドで言えば、マイケル・キャリックのようなタイプが欲しい。つまり中盤の相棒をサポートする強い守備意識を持ち、高度な展開力で攻撃に転じる速度と脅威度を増すことのできるパサーだ。
アーセナル戦では、ポール・ポグバがダブルボランチでマクトミネイとコンビを組んだ。チーム随一の創造性を誇り、いわゆるボックス・トゥ・ボックス型としての身体能力も備えている。しかしポグバは守備の意識が疎かになりがちだ。キラーパスを読まれてカットされたり、ロングシュートが大きく外れたりと、半ば強引なプレーも見られる。
ウェストハム戦のようにネマニャ・マティッチと組んだ場合は攻撃力が半減する。その試合では、頻繁にボールに触れながら先制点のきっかけとなるパスも出した相手MFマーク・ノーブルの存在が際立っていた。加入2年目も出場機会が少ないフレッジは、攻撃的だが守備面で軽量級の印象が否めない。
ポグバの移籍を食い止めるためにも。
スールシャールが登用を辞さないユース出身の若手には、昨季トップデビューした「キャリック2世」ことジェームズ・ガーナーというタレントがいる。とはいえ、実態は一軍経験1分程度の18歳に過ぎない。
指揮官がこの夏、ニューカッスルのシーン・ロングスタッフ獲得に興味を示したのも頷ける。
昨季ニューカッスルで頭角を現した21歳のロングスタッフは、ラファエル・ベニテス前体制下で守備的プレーメイカーとも言うべき才能を発揮し始めたが、スティーブ・ブルース新監督下では、攻守どっちつかずの起用法で精彩を欠いている。
ロングスタッフは生粋のジョーディー(ニュカッスル出身者)だが、移籍商談が進めば本人も心機一転リスタートのチャンスを歓迎するかもしれない。
パサーの新戦力がマクトミネイとコンビを組めば、ポグバを相手ゴールに近い1つ前で使うことができる。攻撃センスを発揮しやすい定位置を与えられれば――クラブによる250億円近い査定額のおかげで移籍が実現しないとされるポグバでも、「脱出」という言葉が飛び出す口を閉ざしてくれるのではないだろうか?