プレミアリーグの時間BACK NUMBER
「ないもの」だらけの名門マンU。
それでも監督交代は得策ではない。
posted2019/10/05 11:40
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph by
Uniphoto Press
開始10分で1枚目のイエローカードが出された、オールド・トラッフォードでのマンチェスター・ユナイテッド対アーセナルが1-1で終了。
そう言えば、イングランド伝統の強豪対決らしく互いに一歩も譲らない熱戦が演じられたようにも思える。
しかし、2019年9月30日のプレミアリーグ第7節で実現した顔合わせは、1点ずつしか取れない凡戦だった。
「近年で最弱の両軍対決」という試合前の哀しい触れ込みは、的外れではなかった。
スコット・マクトミネイがアーセナルのゴールに突き刺した先制ゴールと、ピエール・エメリク・オーバメヤンが冷静にネットを揺らした同点弾は、クオリティを感じさせた貴重な瞬間だった。
アウェイで1ポイントを奪ったアーセナルは、総得点数による順位ではあるが、曲がりなりにも4位を守った。だが実際には「中位対決」という表現の方が似つかわしかった。
「ないもの」だらけなチームの現状。
ユナイテッドを「まるで中位チーム」と感じたのは2週連続のことである。
ロンドン・スタジアムでの敗戦(0-2)は、第2節から無敗と好調なウェストハムが順当勝ちを収めたように思えた。ユナイテッドは試合をコントロールされた。
アウェイまで駆けつけたサポーター陣も、キックオフ直後には「本当のユナイテッドは1チームだけ!」と歌い、東ロンドンの相手ユナイテッドを格下扱いしていたが、最終的に格上相手の敗戦を受け入れるかのような消沈ぶり……。正直、驚かされた。
強豪の風格がまったく感じられない現在のユナイテッドは、「ないもの」だらけだ。元主将で解説者を務めるロイ・キーンが挙げただけでも、「質の高さ、勝利への意欲、ピッチ上のリーダー、不屈の精神」が欠けている。これはウェストハムに敗れた直後の発言だったが、ドローに終わったアーセナル戦では「信じる力」も「ないものリスト」に加えられた。