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アイルランドも日本も欺いた大勝利。
弱点すら伏線にしたジェイミーの策。 

text by

生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byNaoya Sanuki

posted2019/09/30 11:50

アイルランドも日本も欺いた大勝利。弱点すら伏線にしたジェイミーの策。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

大勝利である。しかし、大会は終わっていない。まずはあと2戦、そして悲願の決勝トーナメントが見えてきた。

どう見ても一夜漬けではないアタック。

 今回もそうだ。アイルランドは空中戦を期待していたはずだ。ジャパンは数年かけてキックを主体とした戦略を組み立てていたし、ロシア戦でハイボール処理に弱点があることを露呈していた。

 ところが――。

 ジャパンはキックを放棄した。ジェイミー・ジョセフが強調してきた「アンストラクチャー」と呼ばれる混沌局面を演出するためのキックを捨て、パス、パス、パスと攻め続けた。

 感動的なほどに。

 このアタックは、どう見ても一夜漬けではなく、準備に準備を重ねたアタックだった。

 アイルランドは欺かれた気分だったのではないか。私と同じように。ここまで、攻め続けてくるのか、と。

アイルランドを欺くための「伏線」?

 アイルランド戦の勝利により、私はジャパンへの見方を変えざるを得なくなった。

 これまでは素直な戦い方を好むチームだったが、実は、優れたシナリオライターがいたのだ。

 ジャパンは7月から始まったパシフィック・ネーションズカップから9月6日の南アフリカ戦に至るまで、キックにこだわり続けた。

 それは「伏線」にしか過ぎなかったのではないか?

 アイルランドを欺くための。

 アイルランド戦は、かなり前からポゼッションを重視したアタックを用意していて、封印していたとしか思えない。

 だとすると、このチームの首脳陣は相当に我慢強く、したたかだということになる。

 加えて偶然も作用した。南アフリカ戦、ロシア戦ではハイボールの処理に弱点を露呈したが、それさえも「餌」として活用した。

 意図したものとアクシデントがないまぜになって、アイルランド戦への伏線は張られた気がしてならない。

 これはジェイミー・ジャパンの初めて見せる顔である。

【次ページ】 エディーのレガシーは生きていた。

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