ラグビーPRESSBACK NUMBER
W杯が教えてくれた誇りと熱狂。
きっと日本ラグビーの未来は変わる。
posted2019/10/01 20:00
text by
金子達仁Tatsuhito Kaneko
photograph by
Naoya Sanuki
言い訳はしない。
誰かを貶めたりもしない。
おぼろげにわかってきた。どうやら、それが記者会見におけるラガーマンたちの矜持であるらしい。
ウルグアイのメネセスHCも、例外ではなかった。
「このスケジュールで、この相手と戦うことは大会前からわかっていたことだ」
釜石での勝利から中3日、熊谷で行なわれたジョージア戦は、ウルグアイにとっては相当に過酷だった。涼しい釜石から蒸し暑い熊谷。恐ろしく交通の便の悪い釜石から熊谷。移動に要する時間を考えれば、中3日というよりも中1日半。
それでも、彼は一切の言い訳を口にしなかった。
日本に敗れた直後のアイルランドのシュミットHCも同様だった。
日本より試合間隔が短かったことも、9月の欧州ではちょっと体験できないほど蒸し暑かったことも、断じて敗因にはしなかった。ひょっとしたらラガーマンではなかった英タイムス紙の記者が敗因として2つの要素に触れた記事を書いたところ、他ならぬアイルランドのファンから怒りの反論が多数寄せられたという。
誇りを傷つけられたら……。
とはいえ、記者会見におけるラガーマンたちが怒りという感情を放棄しているわけでもない。
ウルグアイを相手に貴重な勝利をあげた直後、ジョージアのヘイグHCの表情には静かな怒りの色があった。試合終了後に場内に流れた音楽が、ロシアのものだったからである。
「ロシアはジョージアではないし、ジョージアはロシアではない。言葉、文化、すべてが異なる」
言い訳はしないし、誰かを貶めたりもしないけれど、誇りを傷つけられたら全力で立ち向かう。今大会終了後はサントリーサンゴリアスの指揮を執ることが決まっているヘイグHCはニュージーランド人だが、それでも、ジョージアの仲間たちのために、ひいてはテレビにかじりついていた国民のために、組織委員会へ怒りをぶつけた。
それが、いまのところわたしが唯一目にした、ラガーマンの反発であり批判である。