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ダルビッシュの逆襲とカブスの苦境。
「没落」はなぜこんなに早かったか。
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph byGetty Images
posted2019/09/28 11:40
9月22日、ダルビッシュは完投目前の1点リードで迎えた9回に2失点を喫し、敗戦投手に。
レスターの不調、若手の伸び悩み。
ダルビッシュが復調したのと入れ替わりに、調子を落としたのは左腕エースのジョン・レスターだった。
3月28日から6月3日にかけて、レスターは11試合に登板し、4勝4敗、防御率3.32とまずまずの成績を残していた。投球回数は59回3分の2で、奪三振が56、与四球が14、被本塁打が7。彼の平均値といってよい。
ところが6月8日から9月18日にかけて、レスターの成績は急降下する。19試合に登板して9勝6敗、防御率5.18。奪三振105、与四球38、被本塁打19という数字も芳しくない。左右の両エースがこれほど足並みを乱すと、シーズンを勝ち抜くのはむずかしい。
それにしても、カブスはなぜこんなに早く没落を迎えたのだろうか。
2016年、カブスはワールドシリーズを制した。1908年以来、108年ぶりの大願成就だった。陣容もよかった。監督がジョー・マドン。投手陣にジョン・レスター、ジェイク・アリエータ、カイル・ヘンドリクス。打線は、アンソニー・リゾ、クリス・ブライアント、ハビエル・バエス、ウィルソン・コントレラス、アディソン・ラッセル。20代のスターをずらりとそろえた陣容は、「王朝」の到来さえ予感させた。カブスは当分強いぞ、とだれもが思ったのだ。
ところが、ことはそう簡単には運ばなかった。'17年は、NLCSでドジャースに敗退した。'18年は、ワイルドカードでロッキーズに苦杯を喫した。ラッセル、イアン・ハップ、アルベルト・アルモーラといった若手が伸び悩み、'16年以降はドラフトで有望な若手を獲得できなかった。
痛かったトレードの失敗……。
もっと痛かったのは、トレードの失敗だ。'16年、抑えの切り札アロルディス・チャップマンをレンタルするために、カブスはグレイバー・トーレスをヤンキースに譲渡した。トーレスは昨年、大谷翔平と新人王を争い、今季も(9月22日現在)、2割8分4厘、38本塁打の好成績を残している。
'17年には、先発投手陣の一角ホゼ・クィンターナを獲るため、有望株のエロイ・ヒメネスをホワイトソックスに出した。ヒメネスは順調に伸び、今季、2割6分9厘、30本塁打を記録している。逃した魚は大きい。
対照的に、FAで獲得した選手は、それほど期待に応えていない。ダルビッシュについては冒頭に述べたとおりで、まだまだ逆襲が期待できるが、ジェイソン・ヘイワードやタイラー・チャトウッドについては、今後もそう多くは望めない。今年の夏に抑えの切り札として獲得したクレイグ・キンブレルも、6点台中盤の防御率では、首脳陣の歯ぎしりが聞こえてきそうだ。