イチ流に触れてBACK NUMBER
将来的には全国リーグを作りたい。
イチローが草野球にガチで挑む理由。
posted2019/09/27 11:30
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
Getty Images
9月24日、午後3時、シアトル。
夏とさほど変わらぬ強い陽光がさすものの、すっかり低く下がってしまった太陽が秋の訪れを感じさせる。レギュラーシーズンも残り1週間。フィールドでマリナーズの若手選手が早出で打撃練習を行う中、右翼には白球を追うイチローさんの姿があった。
瞬時にスタートを切る第一歩、落下点へ最短距離で入る無駄のない動きと走力、美しいワンハンド・ランニング・キャッチは現役を半年前に引退し、1カ月後には46歳になる“おじさん”のものとは思えない。贔屓目なしに外野守備力はいまだにチーム・ナンバーワン。そう確信させる華麗なる姿がそこにはあった。
この冬、日本で草野球デビューを果たすイチローさんは「背番号1」を付けるエース・ピッチャーだが、右翼を守る可能性もあるだろう。来るべきデビュー戦へ向け、室内打撃練習場で連日300球を投げ込むのと同時に白球を真剣に追う姿に“ガチ”で草野球へ挑む思いを感じさせる。
「その金額でよくサイン出来るよなって」
イチローさんは、3月21日に行われた東京での現役引退記者会見の時から草野球デビューへのを思いを口にしていたが、28年間に及んだ日米でのプロ生活は世界歴代最多の4367安打に代表されるように華々しい経歴を誇る。しかし、その裏にはイチローさんだけが向き合ってきた苦しみもあった。
こんなことをイチローさんが言ったことがあった。
「今のメジャーの年俸って凄いけど、その金額でよくサイン出来るよなって、思うよね」
高騰を続ける超一流選手の年俸。今季の最高年俸はナショナルズのマックス・シャーザーで4214万3000ドル(約45億円)だ。今季はここまで11勝7敗の成績でチームのワイルドカード進出を支えたが、彼のレギュラーシーズンでの1球あたりの単価は150万円を超える。金額に見合った働きかどうかと言えば、議論は尽きないだろう。