草茂みベースボールの道白しBACK NUMBER
大野雄大と与田剛監督の絆。
ノーヒットノーラン達成の裏側。
posted2019/09/29 09:00
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph by
Kyodo News
友人から勤務先での「管理職研修」体験記を聞いた。
専門家による講習の内容は部下を管理する立場で奨励される言動や、逆に許されない言動など。友人によると「部下の心に刺さるのは上司の成功体験ではなく失敗談である」という話が出た。
サラリーマンでなくとも想像できるだろうが、成功体験の多くは盛られた武勇伝であったり、自慢話となる。決して自虐ネタでご機嫌をとれといっているわけではなく「こうしておけば結果は違ったかもしれない。この反省を生かしてもらいたい」という考えを伝えることだ。
柱にあるのは「アンガー・マネジメント」。
上司の資質として大切なのはいかに感情的にならず、怒りをコントロールできるか。
これはすでに社会の常識であって、ほとんどの企業が管理職とその予備軍にはカリキュラムを用意しているはずだ。それでもなお「俺たちの若い頃はなあ……。そんな甘っちょろいことやってられるか」という人間は、もはや部下を管理する職につけてはいけない
快挙達成の大野、昨年は勝利なし。
本題に入ろう。
9月14日の阪神戦で、中日・大野雄大がノーヒットノーランを成し遂げた。援護に恵まれることが少なく、勝ち星こそ9勝と伸び悩んでいるが、防御率2.63はリーグ2位の好成績である。150km超のフォーシームと鋭く落ちるツーシームを中心に組み立てるパワーピッチャーで、DeNAの今永昇太らと並んで、日本球界屈指の先発左腕と評価されている。
実際、11月に開催されるプレミア12の日本代表メンバー入りも内定している。
この大野、前年の勝利数はゼロである。登板がわずか6試合で3敗、防御率8.56という惨憺たる数字を残している。故障ではない。不振に陥った理由の1つがモチベーションの低下だろう。それはほんのささいな「事件」がきっかけとなった。2017年春のキャンプ。スポーツ各紙が見たままを報じたので、その記事をもとに簡単に紹介する。