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羽生結弦、演技点8点台のカラクリ。
4回転アクセル成功に向けた兆しも。
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byYohei Osada/AFLO SPORT
posted2019/09/19 20:00
4回転アクセルについては「試合と両立してトレーニングしていかないといけない」と話す羽生。
「形としては整っていたと思います」
今回の演技について羽生選手はこう振り返る。
「(前半ミスがあったので)後半は冷静に、詰まったトリプルアクセルはダブルにして、次のトリプルアクセルで3回転をつけてリカバリーすることも出来て、後半はプログラムとして形としては整っていたと思います」
羽生が言うとおり、冒頭2つミスはあったものの、そのあとは立て直してまとめた演技だった。2季前までなら、後半の演技をまとめたことを評価して、高い演技構成点も出せた。しかし新たなルールにより、いかに羽生が後半に良い演技をしても、9.25点と8.75点以下にしなければならない。
ジャッジスコアを見てみると、「演技」は6人のジャッジが8.75点をマーク。「音楽解釈」も5人が8.75点とした。このジャッジ心理を裏から読めば、「本当はもっと高い評価を出したいところだが、重大なエラーが2つあったため、最高点の8.75点にした」ということだ。
羽生の目には、もうゴールは見えている。
今回のルールが作られた根本にあるのは「演技が途切れるようなミスがあった場合、プログラムの芸術性が失われるのだから、技術の得点だけでなく演技の得点も減点されるべき」という国際スケート連盟の考え方だ。つまりミスがあった場合、技術も表現も二重に減点されるというルール。大技に挑む選手にとって厳しいが、それだけ成功した時は一気に得点が伸びる。フィギュアスケートの求める究極の演技は、一点の曇りもないパーフェクトなプログラムだということが、明確にルール化されたのだ。
羽生自身もこう振り返った。
「『SEIMEI』と『バラード第1番』や『Hope & Legacy』でノーミスした時の感覚は、今でもずっと残ってる。あの完ぺきだった自分をさらに超えたいという欲があって、それが出来たときにカッコ良かったな、アスリートとして良かったなと思える。それ以外の自分は全部カッコ悪いですよ」
完ぺきだった自分をさらに超える演技。羽生の目には、もうゴールは見えているのだ。1つ1つの演技の得点に左右される必要がないことを、彼自身が一番分かっている。