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「五輪のデザイン」を作るお仕事。
日本の美意識を平安時代まで遡って。 

text by

木崎伸也

木崎伸也Shinya Kizaki

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photograph byShinya Kizaki

posted2019/09/17 07:00

「五輪のデザイン」を作るお仕事。日本の美意識を平安時代まで遡って。<Number Web> photograph by Shinya Kizaki

沢田耕一さん。

日本的な色彩に、東京のモダンを足す。

 こうしてコアの方向性が定まったが、まだ完成には遠い。数千あるオリンピック・パラリンピックのアイテムに調和するか、実用性を検証しなければならないからだ。

「いいと思ったデザインでも、実際に出版物やTシャツに落とし込んでみるとブレやズレが見えてくる。論理性は合っていても、デザイン展開が上手くいくかは、やってみないとわからない。色をどう重ねるか、6カ月くらい試行錯誤しました」

 その結果、新しい表現方法に行き着いた。

「『かさねの色目』の色彩構成を円弧でトリミングすると端正な印象になる。それに白を色として意識して加えると、より日本らしく祝祭感が表現できた。さらにひらめいたのは日本的な色彩ばかりを掘り下げるのではなく、東京のモダンをプラスすること。まだ公表できませんが、世界の誰もが知っている日本・東京の文化をそこに載せたいと考えています。世界初の試みになると思います」

「喜びを感じるのは終わったときかな」

 基本要素のコアグラフィックスを発展させ、実際に大会で使うデザインを「大会ルック」と呼ぶ。今年7月、日本橋が大会ルックの装飾でラッピングされ、街が紅色に染まった。公式ショップで「かさねの色目」をモチーフにした商品の販売も始まるなど、次々に新アイテムがお披露目されている。

「約4週間の大会に向けて、4年近く準備するプロジェクトはなかなかない。オリンピック・パラリンピックが日本に来るのは数十年に1度のペース。それに関われるのは光栄以外の何物でもないです。ただし、喜びを感じるのは終わったときかな。まだ設計図ができて、応用段階に入ったところ。東京2020を観戦に来た人たちに日本と東京を感じてもらうため、すべてをやりきりたいと思います」

沢田耕一さわだこういち

大阪府生まれ。武蔵野美術大学を卒業し、'84年に電通入社。広告ディレクションからパッケージデザインや店舗デザイン、キャラクターデザインなど幅広いクリエーションを手掛け、カンヌ国際広告祭(ゴールド)、D&AD(シルバー)、ロンドン国際広告賞(ゴールド)、グッドデザイン賞、ACC賞(グランプリ)など受賞多数。武蔵野美術大学客員教授。電通在籍時から東京2020大会のコアグラフィックスの設計などに携わり、今年、同組織委員会のデザインディレクターに就任した。

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